著者は冒頭で本書は、お金持ちになるための普遍的な考え方や、時代を見る目の養い方を解説したものであると説明する。では、お金持ちになるための普遍的な考え方とは何だろう。まずお金とリスクについての普遍的な考え方を紹介しよう。
私たちは小さい頃から、お金に対するある特定のイメージを植え付けられている。それは親や先生をはじめとする大人たち、そしてテレビや新聞などから、さまざまな場面で刷りこまれている。この刷りこまれた観念から自由になり、中立にならなければ、お金儲けはできない。お金儲けは、合理主義を徹底させなければ成立しないのだが、こうした観念が合理主義の妨げになり、リスクに対する目を曇らせることになるからだ。
こんな事例を挙げている。日本人の貯蓄好き。リスクを過大に評価してしまうことから起きる。ほとんどの人は「いざというときのため」に貯蓄をすると答える。しかし、実際のところそうなっていないことが多い。病気のときのためといっても、保険で賄えることは多いし、失業時のためにといっても、その貯金額ではまったくといっていいほど足りない場合がほとんどだ。
そうした過度のリスク回避をするいっぽうで、無自覚のうちにハイリスクな行動をとる人もいる。大金を投じて自宅に太陽光発電の設備を導入するなどはまさにその例だ。自宅で発電した電気を使えるのはもちろんのこと、余ったら売電もでき、いわば年金が増えるのと同じことという口上にまんまと乗せられてしまった口だ。おそらくこうした人たちは、多額の投資額と設置後の売電へのリスクを吟味していない。お金に対して過度の執着があると、リスクが見えなくなってしまう。
上記はリスクに関わるお金の話だ。お金持ちたちは、リスクを過大評価しないし、お金に過度に執着しない。常にニュートラルな立ち位置で考えを巡らせている。こうした姿勢は、お金持ちたちに共通するものであり、普遍的なものである。
他方お金儲けには、“タイミング”という重要な要素もある。それは時代を見る目につながる。お金持ちになるための普遍的な考え方や、時代を見る目の養い方を、ぜひ本書でひもといてみてほしい。
書名:大金持ちの教科書
著者:加谷珪一
発売日:2014/12/1
定価:本体1500円(税別)