「教育では、これまでは受験や就職のことが優先され、良い成績・良い就職ばかりが求められてきた。しかし18歳選挙権時代を迎え、市民とは何か、主権者とは何か、有権者になるとはどういうことなのかを、子ども時代を通じて考える機会をもつことが不可欠だという主張が、やっと、日の目を見るようになった。子ども時代からのシティズンシップ教育、政治教育、主権者教育の重要性を大っぴらに言えるようになった。これは、日本社会にとって大きな転換点である。少子高齢化が進む日本にとって、子ども・若者の意識を社会に向けさせるとともに、参画させることになるからである」 ――「おわりに」、本文より
2016年より施行される「18歳選挙権」制度の導入により、選挙権年齢引き下げを契機とした「10代からの政治参加」の是非が
問われるなか、「18歳選挙権」はどのようなプロセスで社会の変革に
寄与し得るのでしょうか。本書は、「子どもの主権者教育」の第一線の研究者であり、長きにわたり教育の現場に携わってきた林氏が、「18歳選挙権」導入の経緯と問題点や、中高生の政治教育を阻む「政治的中立性」の壁、林氏も積極的に取り組む
「模擬選挙」の実状、そして本制度を起爆剤とした若者の政治参画への
展望に関してわかりやすく解説、提言する一冊となります。
【本書の内容 ――目次より】
序章 子どもに政治の話はわからないのか・若者は政治から離れている? ・震災を通して自分の町を感じ、考える・高校生が考える社会問題 ・子どもを市民に育てる責務 ほかコラム① 18歳選挙権で当落に影響が?
第一章 「18歳選挙権」制度の経緯と展望
・「18歳選挙権」が実現する ・他国の状況の変化と「子どもの権利条約」批准・憲法改正論議と投票年齢引き下げ ・18歳選挙権と「徴兵制」・文科省・総務省が作成した政治教育の副教材『私たちが拓く日本の未来』・「副教材」を「べからず集」にとどめない ・一八歳、一九歳は投票に行くのか・成年年齢(成人年齢)、被選挙権年齢の引き下げに向けて ほかコラム② SNSと一八歳の政治活動・選挙運動
第二章 主権者教育を阻む「政治的中立性」の壁・主権者としての子どもの権利 ・現実の政治から逃げる教育現場、扱うことを批判する政治家・「政治的中立性」をふまえた積極的な政治教育を ・政治教育に対する文科省の姿勢の変化・「高校生の政治活動」には届け出が必要? ・公職選挙法への配慮 ほかコラム③ 「公共」とはどんな教科?
第三章 「模擬選挙」とは何か・世界各地でポピュラーな模擬選挙 ・子ども時代に民主主義を学ぶ・模擬選挙の意義 ・現実の政治を扱う模擬選挙 ほかコラム④ 『ドメイン投票方式』とは何か
第四章 一八歳"まで"の政治参加 ――社会全体で育む子どもの主権者意識 ・市町村合併にともなう住民投票で未成年者も投票 ・地域や自治体における主権者教育・「政治家」「政党」こと主権者教育に取り組むべき ・議員サイドから学校に出向く・家庭で取り組むシティズンシップ教育 ・企業が取り組むシティズンシップ教育・メディアが果たし得る役割 ほか コラム④ 子ども・若者が支持するのは保守? 革新?
終章 政治を変えることは、教育を変え、社会を変えること・子どもの最善の利益のために ・一八歳で世界へと巣立たせるために ほか
【著者プロフィール】
林 大介(はやし だいすけ)一九七六年、東京都生まれ。東洋大学社会学部助教。法政大学大学院社会科学研究科修士課程政治学専攻修了。中学・高校の非常勤講師、NPOチャイルドライン支援センター事務局長、文部科学省専門職等を経て現職。総務省・文科省が作成した政治・選挙等に関する高校生向け副教材『私たちが拓く日本の未来』の作成にも携わる。「模擬選挙推進ネットワーク」「子どもの権利条約ネットワーク」事務局長。
http://shinsho.shueisha.co.jp/