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『魂の痕(きずあと)』 梁石日著

  • 書名 魂の痕(きずあと)
  • 監修・編集・著者名梁 石日 著
  • 出版社名河出書房新社
  • 出版年月日2020年1月28日
  • 定価本体1800円+税
  • 判型・ページ数四六判・274ページ
  • ISBN9784309028538

 梁石日の数多い名作のなかでも代表作といっていい『血と骨』は在日コリアンの父をモデルにした長編だったが、これは実の母をモデルにした作品であり、その意味で『血と骨』と対をなす作品といっていい。

 日本統治下の済州島で育った春玉が親に決められて結婚させられた相手はなんと10歳にもならない子どもだった。しゅうとめのいじめに耐えながら春玉は苦しい日々を送る。その人生の転機となったのは横暴な支配に抵抗して闘う男との出会いとその死だった。春玉は日本への脱出を決意、友だちとともに密航して岸和田の紡績工場で働くことになったが、そこでも過酷な運命が待ち受けていた。それをも逃れて居酒屋で働くことになって春玉は荒々しい巨漢・金俊平(『血と骨』の主人公)と出会う。すさまじいまでに激しく波乱にみちた女性の半生を、植民地時代の済州島と大阪を舞台に描く、この作者でしか描けない、著者自ら「最後の小説」と呼ぶ名編である。

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