嫌なことがあって腹を立てたり、思い通りいかない現実に焦ってしまったり、他人の態度に「何か悪いことを言ったかな」と不安になってしまったり、私たちの心はちょっとしたことで揺れてしまう。こうした「心の反応」によって気分の落ち込みやマイナスの感情が生まれていると考えると、この反応を制御することができれば、悩みごとや精神的な苦しみは少し楽になるのかもしれない。
『反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」』(草薙龍瞬著、KADOKAWA刊)はこんな観点から、心の反応を抑えることを学ぶことができる一冊だ。
本書の土台となっているのは仏教の考え方であり、ブッダの教えである。
もちろん、ブッダが生きた時代から、人は悩む生き物だった。老いへの恐怖や病の苦しみ、嫉妬、焦り。こうした悩みは何千年も前から人々をさいなんできた。
こうした悩みが「心の反応」から引き起こされるものだとすると、その原因に立ち返れ、とするのがブッダの教えだ。
たとえば、職場の同僚のちょっとした言動にイライラしてしまい、忘れられない時。周囲に相談すると、だいたいこんな言葉をかけられる。
「気にしすぎだよ」
「ほかに楽しいことを考えようよ」
これはこれで納得できるアドバイスだが、当事者としてはこうした言葉ではすっきりしないはず。日常に戻るとまた「なぜかわからないが、同僚といるとイライラする」という状態に戻ってしまう。
このイライラの原因がどこにあるのかと考えると、まずは「同僚のちょっとした言動」ということになる。しかし、もっとさかのぼると、自分の心の問題に行き当たる。
苦しみが何ゆえに起こるのかを、理解するがよい。
苦しみをもたらしているものは、快(喜び)を求めてやまない"求める心"なのだ。(P21より)
この「求める心」こそが、さまざまな出来事に対して心が反応するエネルギーであり、
・生存よく(行きたい)
・睡眠欲(眠りたい)
・食欲(食べたい)
・性欲(交わりたい)
・怠惰欲(ラクをしたい)
・感楽欲(音やビジュアルなど感覚の快楽を味わいたい)
・承認欲(認められたい)
の7つがある。この「求める心」があるからこそ、私たちは不満を感じたり苛立ったり、焦ったりするわけだ。そして、周囲の人に対する物足りなさや不満は、承認欲によるものだろう。
もちろん、求める心があるからこそ、人は努力したり何かに挑戦できる。しかし、努力がいい結果に結びついても、挑戦が成功しても、求める心は尽きることがない。そこに悩みや苦しみがつきまとう。心とはそういうものだと理解することが、悩みから解放される第一歩なのだ。
◇
心は常に求めつづけ、満たされることはない。
このことを理解してはじめて、無駄に悩まない人になるための次のステップに進むことができる。本書では仏教の教えをもとに、悩みに振り回されないための考え方と自分の心の扱い方を指南していく。
必要な悩みもあるが、悩まなくてもいいところで悩むのは人生で余計な遠回りをするもと。毎日を充実させるために、手に取ってみたい一冊だ。
(新刊JP編集部)
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