全国の書店員が一番売りたい本を投票で選ぶ「2021年本屋大賞」は、2021年4月14日大賞が発表され、町田そのこさんの『52ヘルツのクジラたち』(中央公論新社)に決まった。
『52ヘルツのクジラ』は、子どものころから人生を家族に搾取されてきた主人公の女性・貴瑚が、大分県の海辺の田舎町で、母親から虐待を受け「ムシ」と呼ばれている少年と出会い、絆を深めていく物語。
52ヘルツのクジラ」とは――
「他のクジラが聞き取れない高い周波数で鳴く、世界で一頭だけのクジラ。たくさんの仲間がいるはずなのに何も届かない、何も届けられない――」 (中央公論社『52ヘルツのクジラたち』特設サイトより)
本書は昨年(2020年)4月に刊行された。授賞式のスピーチで町田さんは当時を振り返り、「暗く荒れている海に、小さな小さなクジラの赤ちゃんみたいなのを放流するっていう想像をよくしていた」と語った。新型コロナの感染拡大で世の中が今より混乱していたころで、町田さんも「これからどうなるんだろう」という不安を抱え、「そんなときに、無名に近い自分の本がいったいどこまで頑張れるんだろう、とすごく不安になっていたと思う」と率直な思いを吐露。時々涙で声を詰まらせながら、次のように感謝の気持ちを語った。
「この本を売らなければってがんばってくださった中央公論新社の皆さん、(コロナで)大変な中、読者の人に一番近いところでずっと応援し続けてくださった書店員の皆さん、その沢山の人の想いがのった本を受け取ってくださった読者の皆さんのおかげです」
2位~10位は下記の通り。
2位 青山美智子さん著『お探し物は図書室まで』(ポプラ社)また、翻訳小説部門の1位には、ディーリア・オーエンズさんの『『ザリガニの鳴くところ』(早川書房)が、「超発掘本!」にはみうらじゅんさんの『「ない仕事」の作り方』(文春文庫)が選ばれた。
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