「未熟な漫画家」菅田将暉×「美しき異常者」Fukase(SEKAI NO OWARI)。相まみえるはずのない二人が出会い、事件となる。二人の共作、それは連続殺人事件――。
6月11日に公開された映画「キャラクター」。「20世紀少年」「MASTERキートン」をはじめとする浦沢直樹作品を数多く手がけてきたストーリー共同制作者・長崎尚志(ながさき たかし)さんが、構想に10年かけたオリジナルストーリーだ。
「もしも、売れない漫画家が殺人犯の顔を見てしまったら? しかも、その顔を"キャラクター"化して漫画を描いて売れてしまったとしたら??」
こうしたアイデアを基軸に、登場人物(キャラクター)が幾重にも交錯する物語を描いた「体験型ダークエンターテインメント」となっている。
今回紹介する本書『キャラクター』(小学館文庫)は、映画の原案・脚本を担当した長崎さんがセルフノベライズした1冊。どうやら「映画とは異なる結末」のようだ。
■著者コメント
「この作品は映画『キャラクター』の第何稿目かのシナリオをもとに、小説にしたものです。したがって登場人物のイメージはそのままですが、後半からラストにかけてのストーリーは大幅に異なります。別バージョンの『キャラクター』として、どうぞお楽しみください」
山城圭吾はマンガ家デビューを夢見ていた。しかし、絵は抜群だがストーリーがつまらない。キャラクターがつくれない。有名漫画家・本庄勇人のアシスタントをもう5年つづけている。
"キャラクター"とは「マンガに登場する人物の設定、性格、造形」のこと。マンガ業界では「特異な人物像を思いつけるマンガ家ほど才能がある」と言われていた。
新人賞に応募すれば、結果は入選以上。そのたびに担当編集者はつくが、「山城さんのマンガにはキャラクターがないんだよね」と指摘されることも。山城がデビューできない原因は"キャラ"にあると、本庄も考えていた。
「あいつ、幸せに育ったのかどうかわからねえけど、リアルな悪役が描けねえじゃん......(中略)あいつの中に悪人が存在しねえのよ......だからサスペンスやホラーは絶対描けない」
ある日、山城は「どこから見ても幸せそうな家」のスケッチを本庄から頼まれる。すでに頭の中にあった家を訪れると、今晩にかぎって灯りは消え、想像していた笑い声のかわりに大音響でオペラが流れていた。
すると玄関ドアが少しだけ開き、隙間から手が伸びる。どうやら山城を招いているようだった。おそるおそる中に入ると、ダイニングテーブルに5人。なぜか微動だにしない。
「真っ赤な顔で笑っている。死んでいる。死んでいるのだ。端にすわった死体のひとりが動いた。(中略)突然、部屋の灯りがついた。血染めの死人が立っていた」
「ぼくの顔、見た? 見ちゃったよね」
第一発見者となった山城。やがて彼は、この事件をモデルにしたマンガでデビューを果たし、売れっ子マンガ家になる。ところが、山城のマンガを模したかのような事件が相次いで発生し......。
映画「キャラクター」は、ノベライズのみならずコミカライズもされている。
いわや晃さんがマンガを描いた『キャラクター』(ビッグ コミックス)では、登場人物・キャラクター・人間関係は映画と同じだが、彼らの選択の違いにより、映画版ともノベライズ版とも異なるマンガ版ならではの驚きの結末が描かれているという。
小学館公式サイトでは、小説『キャラクター』(小学館文庫)のプロローグ、マンガ『キャラクター』(ビッグ コミックス)の第1話「複写(トレース)された悪」の一部を試し読みできる。
映画も小説もマンガも、それぞれのおぞましさがある。3つとも「異なる結末」というのも気になる。ああ、すべてのバージョンを見てみたい! このゾクゾク感、あなたもクセになるにちがいない。
■長崎尚志さんプロフィール
小説家、漫画原作者、漫画編集者。出版社勤務後、独立。2010年『アルタンタハー 東方見聞録奇譚』で小説家デビュー。「闇の伴走者 醍醐真二の博覧強記ファイル」はWOWOWで連続ドラマ化された。他に『県警猟奇犯罪アドバイザー 久井重吾』シリーズ、『風はずっと吹いている』などがある。
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