働き盛りの40、50代は、むし歯にでもならない限り、歯医者に行く機会は少ない。何らかのきっかけで定期的に通っていたとしても、コロナ禍で中断してしまった人も多いのではないだろうか。ただでさえ、日本は諸外国と比べ、口腔ケアに対する意識が低いと言われるが、マスク生活が長引いている今、お口の中は「人類史上最悪」の状態になっているという。
歯科医歴30年、サウラデンタルクリニックの堀滋さんの著書、『ウイルスも認知症も生きづらいのも、すべて歯のせい?』(小学館)には、そんな40~50代に向けて、間違いだらけのデンタルケアを見直し、正しい歯の知識を身につけるためのノウハウがまとめられている。
50代のライター、加茂直美さんが堀さんに質問する会話形式で、むし歯や歯周病の基礎知識から、ホームケアの方法、いざという時に頼りになる最新治療まで、かみ砕いて説明してくれる。
堀さんによると、長時間マスクをしている今は、息苦しくて無意識に口呼吸になってしまう患者が多いという。口呼吸になると、口内が乾燥してだ液が不足する。その結果、自浄作用が落ちて、口臭、歯周病、むし歯などの原因に。まさに今は、口の中が「史上最悪」の状況になっているのだ。
むし歯や口臭だけではない。口内には数百種類もの細菌が住んでおり、それらがインフルエンザなどの病原性ウイルスの増殖を助ける物質を作り出すことがわかっている。口内環境が悪化すると、病原性ウイルスも増殖し、インフルエンザやコロナなどの感染症にかかりやすくなるリスクも高くなる。
さらに、口腔ケアを怠ると、誤嚥性肺炎や動脈硬化、アルツハイマー型認知症など、さまざまな病気の引き金になってしまう。予防のためには、口の中の歯周病菌を減らし、脳に行く菌の量を抑えることが大事だという。
厚生労働省のデータによると、歯の定期的な検診を受けていない場合、80歳で残っている歯の本数はたったの6.8本。歯の喪失は、40代50代から加速するという。その2大原因が、むし歯と歯周病だ。
本書は、自分の口の中の状態を知るためのセルフチェックに始まり、「1.健康に100歳まで生きるために口腔ケアが大事な理由」「2.おうちでできる歯のメンテナンス習慣」「3.かかりつけ医にまかせるべき予防と治療」の3つの章で構成されている。
コロナ禍の必須ケアとして堀さんが推奨するのは、「舌磨き」だ。舌には「舌苔(ぜったい)」というコケのようなものがついていることがある。これは、食べかすだけでなく、細菌やウイルスが舌の表面に付着したもの。細菌を増殖させ、口臭や歯周病の原因になるだけでなく、最近の研究では、新型コロナウィルスを活性化させ、細胞に侵入させやすくする物質が舌苔の中に存在していることがわかってきたという。
舌磨きは、専用のブラシを使ってもよいが、普通の歯ブラシでもOK。舌の粘膜はデリケートなので、力を入れてゴシゴシこするのではなく、鏡を見ながら、舌苔がついているところを、奥から手前に向かってやさしくなでるようにブラシを動かすのがコツだ。1日1回、就寝前に行うのがおすすめ。朝起きたらうがいか歯磨きをし、朝食後にもう一度歯磨きをするのが理想だという。
詳しいやり方は本書にイラスト付きで掲載されているので、気になるかたはぜひチェックしていただきたい。
本書にはほかにも、「初診で歯を削る歯医者に行ってはいけない!」「歯医者がかかりたい歯科医院とは?」など、歯科医目線での歯医者選びのポイントも紹介している。
40、50代は口腔ケアの始め時。感染症予防はもちろん、80歳になっても自分の歯で食事をおいしく食べて、しゃっきりした頭と体でいられるよう、お口の中の健康を見直したい。
■堀 滋さんプロフィール
歯科医師。サウラデンタルクリニック院長
1959年生まれ。日本大学松戸歯学部卒業。昭和大学歯学部付属歯科病院口腔外科勤務ののち、日本橋中央歯科診療所などを経て、堀歯科診療所を開設。診療の傍ら、スウェーデンのイエテボリ大学で実践されている歯周病臨床実践コース、同アドバンスコース、ペンシルバニア大学アドバンスインプラントコース受講など、海外の最新治療を学び、治療に取り入れている。2021年、全身の健康につながる医療を追求するため、東京都港区内に自由診療専門のサウラデンタルクリニックを開設。院内には、顔まわりから全身の筋肉ケアのためのリラクゼーションサロンも併設。テレビ朝日『林修の今でしょ!講座』などに出演。著書に『歯のメンテナンス大全 人生100年時代の正しいデンタルケア88のリスト』(飛鳥新社)。
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