芸能界という世界の中で商品であることには、わたしはちょっと繊細すぎて、厄介であった――
お笑いタレントとしてはもちろん、俳優やエッセイストとしても活躍する青木さやかさん。2021年には母との確執やギャンブル依存症など、自身の経験を赤裸々に綴った小説風エッセイ『母』を発売し、話題を呼んだ。その青木さんが、3月19日にエッセイ、『厄介なオンナ』(大和書房)を上梓した。
本作では、青木さんの「厄介な自分」の姿が率直に描かれている。タレントとして、母として、「繊細さ」に苦しんできた青木さん。多くのテレビ番組に出演していた30代前半に、男性芸人から「容姿いじり」をされることが多く、顔では笑いながらも、実はとても傷つき、苦しかったと明かしている。
つらかったのは、若い男性芸人から「おばさん」と呼ばれているのを見て、若い女性客が高い声で笑っていることだった。
「おばさん」と呼ばれて嬉しくなかったし、「おばさん」と女性が言われるのを笑っている女性客には塩でも投げつけたい気分になった。
それでも、本気で嫌がっていることが伝われば、「扱いづらいヤツ」と思われてしまう。芸人としては致命的だ。心がズタズタに傷つけられても、青木さんは、自分を「いじってくれた」先輩に、感謝を伝えに行った。
収録が終わると、容姿をいじってくれた先輩のところへいき、「(いじっていただいて)ありがとうございました」と頭を下げた。(略)
わたしは傷つきながら先輩に感謝した。二度といじらないでほしい、と思いながら言った。
「またお願いします」。
わたしは、わたしを愛情をもっていじってくださる先輩が好きだった。しかし、そのいじり方はすべてが嬉しいものではなかった。だけど、あれはやめてほしいんです、これも傷つきますので、とは言えなかった。せめて好きな先輩には、扱いづらいと思われたくなかった。扱いやすい女芸人でいたかった。
先輩の「いじり」には愛情を感じられたのでまだ我慢もできたが、街に出れば、テレビで観たのと同じようにいじってくる人もいた。青木さんが黙っていると、「キレないんだ!」とはやしたてる。「みんながいじっているんだから、自分もいじっていいんだ」と思うのか、芸人は傷つかないとでも思っているのか......。
容姿のコンプレックスは、自分で言うのと人から言われるのとでは、同じことを指していたとしても大きく違う、と青木さんは言う。淡々と、まっすぐに偽らざる気持ちを伝えようとする言葉が胸を打つ。
本作には、光浦靖子さんとの特別対談も掲載されている。近しい境遇を生き抜いてきた彼女らが語るのは、世間の目を気にして数十年生きてきたということ。こちらも気になる。
本書の目次は以下の通り。
【目次より】
容姿いじり
講演会は難しい
愛さんのこと
有名人になってみて
アナログ人間
パニック症のこと
誰かといたい
ゲッターズ飯田くん
サイババに会った
ここだけの話
空気を読む
恋愛偏差値23
セックスについて
魅力的なオトコのポエム
40代は西向きの家を
ポンテ・ヴェッキオ
「ランド、行く?」
料理のこと
娘が好きな濃いめのミートソース
娘が好きな卵とほうれん草のスープ
娘が好きな濃いめの肉じゃが
ハワイが好きだ
人生で最高の映画
不思議な友人
ネタを書く!
キング オブ コント
もしいま「娘へ」という遺書をのこすなら
人気タレントとして活躍してきた青木さんの知られざる一面がギュッとつまった作品だ。
■青木さやかさんプロフィール
1973年生まれ。愛知県出身。
タレント、俳優、エッセイスト。大学卒業後、中京地区にてフリーアナウンサーとしてタレント活動後、上京。2003 年、ワタナベエンターテインメントに所属し、テレビのバラエティ番組でブレイク。「どこ見てんのよ!」は当時の流行語にもなった。テレビ番組のリポーターやドラマ、舞台で活動する一方、婦人公論.jp の連載をまとめた小説風エッセイ『母』を上梓し、話題に。動物保護活動にも力を入れ「犬と猫とわたし達の人生の楽しみ方」を主宰、多方面で活躍している。
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