ジャンルを問わず、さまざまな名作を音声で楽しめるAmazonのaudible(以下、オーディブル)では、「え!あの人が読んでるの?」と思うような大物俳優や声優、アナウンサーがナレーションを担当していることがある。
オーディブルでは、日本語では初となる村上春樹さんの10作品のオーディオブック化を進行中だ。現在、「騎士団長殺し」を高橋一生さん、「海辺のカフカ」を木村佳乃さん、「神の子どもたちはみな踊る」を仲野太賀さん、「職業としての小説家」を小澤征悦さん、「東京奇譚集」をイッセー尾形さんが朗読することが決定している。
その配信第1作目として、世界的に評価の高い長編『ねじまき鳥クロニクル』を朗読するのは、俳優の藤木直人さんだ。「第1部 泥棒かささぎ編」は4月25日、「第2部 予言する鳥編」は6月1日、「第3部 鳥刺し男編」は7月15日に配信される。
電話がかかってきた。僕はFM放送にあわせてロッシーニの『泥棒かささぎ』の序曲を口笛で吹いていた。(...)電話のベルが聞こえたとき、無視しようかとも思った。スパゲティーはゆであがる寸前だったし、クラウディオ・アバドは今まさにロンドン交響楽団をその音楽的ピークに持ちあげようとしていたのだ。しかしやはり僕はガスの火を弱め、居間に行って受話器をとった。新しい仕事の口のことで知人から電話がかかってきたのかもしれないと思ったからだ。
こんな垢抜けた一節も、文章のカッコよさに負けない華やかな声で読み上げてくれる。
藤木さんは朗読を終えての感想を聞かれ、次のように話している。
「過去に朗読劇の経験はありますが、書籍まるごとの朗読はないため、今回が初めての挑戦となりました。話し言葉と文語体の表現の差や役の演じ分け、複数の時間軸に加え、書かれ方が章によって異なるため、悩みながら読み進めた部分も多くあります。」
特に、キャラクターの演じ分けをどうするかということには悩まされたようだ。
「朗読なので、淡々と読むべきなのか、ある程度キャラクターに合わせた声色じゃないですけど、そういうのを作るべきなのか、非常に悩んだんですよ。ただ、登場人物同士の会話だけで進んでいく場面があるので、そこでどっちが喋ってるのか分からなくなっちゃうと、多分聞いている人も聞きづらいだろうなってことで、ある程度はキャラクターが見えるような喋り方をした方がいいんじゃないかって監督とも話して。」
過去に蜷川幸雄さん演出の舞台『海辺のカフカ』に出演したことがある藤木さんは、『ねじまき鳥クロニクル』に、『海辺のカフカ』と似ている要素を感じ取り、読んでいて「嬉しくなった」という。「村上作品の魅力は?」という質問に、藤木さんはこう答えた。
「淡々とした文体なんだけど、暴力的な、残虐的なこともちゃんと描いてるし、人間の持っているある部分として描いてるなって。」
藤木さんの声を通して生まれ変わった『ねじまき鳥クロニクル』。オーディブルの作品紹介ページでは試聴ができる。また、インタビューの模様は動画で配信されている。
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