5月13日発売の「プレジデント」(2022年6月3日号)は、「『捨てない』生き方」を特集している。流行の「断捨離ブーム」と正反対の、モノも縁も捨てない生き方とは?
作家の五木寛之さんが「人生に輝きをもたらす捨てないという選択」と題して寄稿している。五木さんは『捨てない生きかた』という本を出したばかりだ。仕事、愛着のあるガラクタ、人とのつきあいについて、「そんなに簡単に捨てられない」と書いている。
部屋の隅には、もう着なくなった服や、一度も履いていない靴、もう使うことのないトランクなどが、もう何十年もそのままの状態で置かれているという。モノには記憶を呼び起こす「依り代」の役割があるので、捨てられない、と書いている。過去の記憶によって、孤独感は薄れ、心は自然と潤ってくるからだ。
断捨離ブームの中、「モノを捨てない」と公言するのは気恥ずかしかったが、モノをつくっては捨てるというやり方に疑問を感じ、声を上げたそうだ。
「捨てるから捨てない生き方に変わらないと人類も地球ももたない」
資本主義はモノだけでなく、命も人も捨てるのだということが明らかになってきた、と指摘する。
「断捨離」がブームになって久しいが、『新・片づけ術「断捨離」』の刊行から13年、「断捨離」にも変遷があるという。以前から整理術の本はあったが、「断捨離」以降、捨てるのはモノだけでなく、人も、事柄も、社会的な仕組みなども対象になったという。
さらに「こんまり」の愛称で知られる近藤麻理恵さんの著作は世界的なブームにもなった。よりよく生きる方法として断捨離や片づけを提唱したのは「自己啓発」にほかならない、と評論家の真鍋厚さんは指摘する。その後、最低限のモノだけを持って暮らす、ミニマリストが登場する。
こうした流れの中での今回の「捨てない」特集は、挑戦的なものと言えよう。ビジネス誌らしく、脱「捨てる経済」の記事では、LIFULL代表取締役社長の井上高志さんが進める、空き家・廃校を活用した事業など、捨てられたものを利用するビジネスを紹介している。
「捨てない」技術の記事では、洋服、家具、ぬいぐるみ、陶器をお直しする4人の専門家に話を聞いている。古い物でも捨てずに使い続ける方法はある。
フリマアプリ、メルカリにシニアがはまっているというコラムも興味深い。60代以上の平均年間出品数は20代の2倍だというのだ。フリマアプリを使うようになり、「捨てる前に再利用を考える」「将来売るためにモノを大切に扱う」など、意識も変化したことを紹介している。
「断捨離」にうんざりしている人には、一読を勧めたい。
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