作家の群ようこさんは御年67歳。大のスマホ反対派だった。絶対にスマホなんか持つものか、あんなものは一生いらない、そう思っていた。......ところが今、群さんの手にはiPhone8が。
何種類も要求されるパスワードがわずらわしい。画面が小さくて文字が読めない。充電作業がめんどう。やっぱり便利なことよりも不便なことが多いじゃない! スマホになじめないすべての人に贈る、群さんのスマホ奮闘記『スマホになじんでおりません』(文藝春秋)が発売された。
そもそも群さんは、携帯電話すら持ったことがなかった。仕事は在宅で、締め切りはほぼ月単位なため、すぐに連絡が取れなくても不自由しなかったのだ。だからスマホが登場したときも「ふーん」としか思わなかった。
それよりも、スマホを持っている人たちのマナーの悪さや電車内で取り憑かれたようにスマホに夢中になっている姿を見ると、「スマホに人間が操られている」ような気がする。絶対にスマホなんか持つものか、あんなものは一生いらない。群さんはそう考えていた。
そんな群さんがなぜスマホを持つことになったのか。その理由は飼いネコだ。動物病院に連れて行こうと固定電話からタクシーを呼ぼうとするも、何度かけてもつながらない。こんなことは今までなかった。これを友人に話すと、「今は固定電話からはタクシーはほとんどつかまらなくなっているらしいわよ」「今は絶対スマホが優勢なのよ。スマホだとすぐにタクシーが呼べるから」だそうである。
群さんのネコは22歳の老ネコ。何かあったときにすぐにタクシーを呼べないのは困る......と、友人の口車にのせられて、友人と同じiPhone8を買うことに。
ところが、購入に出向いた携帯ショップで最初の難関、パスワード地獄が待っていた。その後も、メールアドレスの設定・入力、友人から生存確認のため義務づけられたスマホゲーム、こまめな充電作業......と、スマホの不便は尽きない。
スマホを使いこなせていない人は共感必至の奮闘エッセイ。ちなみに本作を編集したのは「LINEも使えない40代担当者」で、装画を手がけた久保田寛子さんも「まだ、ガラケー使っています」だそうだ。スマホに苦しんでいるのは、あなただけではない。
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