短歌といえば、俵万智さんの『サラダ記念日』(河出書房新社)は多くの人がご存じだろう。
「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日
毎年7月6日にはTwitterのトレンドに入るほど有名な作品だ。でも、これ以外の短歌は、国語の教科書に載っていた古いものしか知らないという方も多いのではないだろうか。
現代短歌を知らないのはもったいない! 文学に詳しくなくてもサラッと読めてフフッと笑える、現代短歌入門編をまとめてみた。
まずは『サラダ記念日』から、他の作品をご紹介しよう。
思い出の一つのようでそのままにしておく麦わら帽子のへこみ
大きければいよいよ豊かなる気分東急ハンズの買物袋
現代短歌には、日常の「キュン」とする瞬間や、思わず「フフッ」と笑ってしまうような瞬間を切り取ったものが多い。読んでいると、「こういう瞬間、ある!」と共感できる短歌もあるのではないだろうか。
それでは、初心者のためのえりすぐり現代短歌を、一気にどうぞ。
■岡野大嗣さん
もういやだ死にたい そしてほとぼりが冷めたあたりで生き返りたい
そうだとは知らずに乗った地下鉄が外へ出てゆく瞬間がすき
(『サイレンと犀』書肆侃侃房)
返信はしなくていいからアメリカっぽいドーナツでも食べて元気だして
もう一軒寄りたい本屋さんがあってちょっと歩くんやけどいいかな
(『たやすみなさい』書肆侃侃房)
■上坂あゆ美さん
大体はタンパク質と水なのにどうして君が好きなんだろう
ロシア産鮭とアメリカ産イクラでも丼さえあれば親子になれる
下半身から血が出る日にもおにぎりを握り続ける母という人
(『老人ホームで死ぬほどモテたい』書肆侃侃房)
■戸田響子さん
思い通りにならないようだと思ったが一応三分ぐらいはごねる
おだやかな動物のように「しゃっませー」とひと鳴きし去る店員の背中
(『煮汁』書肆侃侃房)
■斉藤斎藤さん
こういうひとも長渕剛を聴くのかと勉強になるすごい音漏れ
静岡の長さに負けて三〇〇円コーヒーを買う行きも帰りも
(『人の道、死ぬと町』短歌研究社)
■小坂井大輔さん
「出来上がり」ランプが灯るまで中の液体はまだコーヒーじゃない
真夜中にどん兵衛食べたくなる時の気持ちが人間らしくていいね
(『平和園に帰ろうよ』書肆侃侃房)
なんとも言葉にしがたい日常の一瞬を、五七五七七に込めた現代短歌。思っていたよりも身近に感じていただけたのではないだろうか。お気に入りの一首を見つけていただけたら幸いだ。
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