読み聞かせボランティア歴17年のミモザさんが絵本をおすすめする、「ミモザの読み聞かせ絵本」シリーズ。第6回のテーマは「アジアの絵本」です。
日本の絵本か、翻訳ものでも欧米圏の絵本しかなじみがないという方は多いのでは? ぜひアジア各国の絵本にも注目してみましょう。絵本を開くと、その土地の文化が見えてきます。子どもがいろいろな国を知るきっかけにはもちろん、大人が読んでも発見があるはずです。
【インドの絵本】『猫が好き』
アヌシュカ・ラヴィシャンカ 著、デュルガ・バイ 他 絵、野坂悦子 訳
グラフィック社
南インドの小さな出版社「Tara Books(タラブックス)」が作った絵本。シルクスクリーンで、なんと一冊一冊手作りされています。手にとって初めてわかる、ハンドメイドの質感、美しさ。タラブックスの絵本は、世界中で称賛を集めています。
本作には、インド各地のさまざまな部族出身のアーティストが描いた、個性豊かな猫たちが登場します。のんびりやの猫。しんみり猫。ぎょっとしてる猫。どんな表情の猫がいるかな? インドのアートを感じられる絵本です。
【中国の絵本】『ウェン王子とトラ』
チェン・ジャンホン 作・絵、平岡敦 訳
徳間書店
猟師に子どもを殺された母トラが、村を襲うように。困った王に、占い師が「王子をトラにさしだせば、国に平穏がおとずれる」と予言します。王は言われた通り、幼いウェン王子を森の奥に置き去りにしました。すると母トラは、王子を我が子のように育て始めて......。
まるで中国版もののけ姫のような設定は、パリのセルヌスキ美術館に所蔵されている、「食人虎卣」と呼ばれる殷の青銅器から着想を得たのだそう。「食人」と名がついていますが、トラが人の子どもを大切に抱きかかえているようにも見えます。また、中国には「子文」という人がトラに育てられたという伝説も残っています。まさに、中国の文化が生んだ絵本ですね。
ミモザさんが小学5年生のクラスで読み聞かせしたときに、男の子が「感動した......」とつぶやいたのが印象に残っているそうです。子どもの胸を打つ物語を、ぜひ読んでみてください。
【韓国の絵本】『チェクポ おばあちゃんがくれたたいせつなつつみ』
イ・チュニ 文、キム・ドンソン 絵、おおたけ きよみ 訳
福音館書店
韓国語で「チェク」は本、「ポ」は端切れを縫い合わせて作る韓国版風呂敷(ポジャギ)の略で、「本を包む風呂敷」という意味。かつて、鞄を買うお金のない家の子どもたちは、チェクポに教科書を包んで学校に通っていました。
絵本の舞台は1970年代の農村部。主人公のオギが使っているチェクポは、おばあちゃんが作ってくれたものです。オギは、クラスのダヒが使っている新しい鞄がうらやましくてたまりません。オギはダヒに古いチェクポをからかわれ、大げんかしてしまいますが......。
ミモザさんが美術館でのボランティアの際にこの絵本を紹介すると、年配の女性が「懐かしい風景」と言ったそうです。韓国の風景を描いた絵本ですが、かつての日本にもよく似た風景が広がっていたのでしょう。海外の絵本を開いたら、なぜか懐かしい風景がそこに......そんな心のつながりをもたらしてくれる絵本が、他にもどこかにあるかもしれません。
ミモザの読み聞かせ絵本、次回もお楽しみに!
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