お子さんのいる方は、ベビーカーを電車やバスにのせるときに苦労したという経験があるのではないだろうか。もしかしたら、「邪魔だ」などと罵声を浴びせられたことがあるという人もいるかもしれない。
またあるいは、多くの女性が、夜帰るときに暗い道を避け、明るい道を選んで急いで帰るように気をつけているだろう。
こういった困難を、あなたは当たり前のことだと思っているだろうか。これらが「都市が男性のためにデザインされているせい」だと指摘するのは、「フェミニズム地理学者」のレスリー・カーンさんだ。カーンさんがフェミニズムの視点から都市をとらえた著書が、日本語に訳されて『フェミニスト・シティ』(晶文社)として発売された。
カーンさんはカナダ郊外で育ち、トロントに出てきた。そして、出産はロンドンで経験した。トロントでもロンドンでも、カーンさんは記事冒頭で触れたような困難に行き当たったという。
都市の多くの公共スペースは女性のために設計されておらず、母親や労働者、介護者として生活する女性たちは、常に不自由を強いられてきた。ヨーロッパではかつて、街を歩くだけで売春婦と思われた時代があったそうだ。このような困難は、都市を男性が計画し、男性が作ってきたからだとカーンさんは説く。
カーンさんは本書で、都市が抱えるジェンダー上の問題を解説し、あらゆるジェンダーやマイノリティにとって住みよい都市計画を提案している。「フェミニズムと都市」という切り口から、あなたの住んでいる街と暮らしを見つめ直してみてはいかがだろうか。
【目次】
イントロダクション:男の街
女は厄介者
都市について書いているのは誰か?
自由と恐怖
フェミニズム地理学について
一章:母の街
女性の場所
母親業のジェントリフィケーション
性差別のない街とは など
二章:友達の街
友情に生きる
友情と自由
クィア女性の空間 など
三章:ひとりの街
パーソナルスペース
ひとりでいる権利
女が場をもつこと など
四章:街で声を上げること
都市への権利
安全をDIYする
アクティヴィズムにおけるジェンダー など
五章:恐怖の街
恐怖心の正体
危険の地理
押し戻す方法 など
あとがき:可能性の街
■レスリー・カーン(Leslie Kern)さん
マウント・アリソン大学地理・環境学准教授。女性・ジェンダー研究ディレクター。専門は、ジェンダー、ジェントリフィケーション、フェミニズム。著書に『Sex and the Revitalized City: Gender, Condominium Development, and Urban Citizenship』(2010)がある。
■東辻賢治郎(とうつじ・けんじろう)さん
1978年生まれ。翻訳家、建築・都市史研究。関心領域は西欧初期近代の技術史と建築史、および地図。訳書にレベッカ・ソルニット『迷うことについて』『私のいない部屋』などがある。
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