BOOKウォッチで以前、首都圏の有名私立中高一貫校と公立名門校、約30校の最新実態をまとめた『中学受験の前に知りたい合格するための全情報 名門校の真実』(田中幾太郎 著/日刊現代 発行、講談社 発売)を紹介した際、読者の反響が大きかった。
お子さんの中学受験を考えているご家庭はもちろん、そうでなくても、親としては世の教育事情は気になるもの。
本書『医学部にはエスカレーターでのぼりなさい 偏差値40から浪人せずに医者になる方法』(日刊現代 発行、講談社 発売)は、「大切な子どもに将来は医師になってほしい」と願う親御さんのために書かれた1冊だ。
偏差値、倍率、授業料......大きな負担がのしかかる医学部受験。そこから「解放」するために、受験カウンセラー・野田英夫さんが「知る人ぞ知る、医学部進学の奥の手」を紹介している。
はじめに、医学部への進学ルートを3つ挙げている。
1つ目は、「都県立」などの上位ランクの高校から医学部専門予備校などを併用し、大学受験で医学部に挑戦させるルート(「医学部受験1.0」)。
2つ目は、「中学受験」で難関進学校に入学させ、中学・高校から医学部専門予備校などを併用し、大学受験で医学部に挑戦させるルート(「医学部受験2.0」)。
3つ目は、大学付属校の中で医学部のある学校に進み、つねに上位10%に入る成績を目指し、内部進学(推薦)で医学部に進学するルート(「医学部受験3.0」)。これまでスタンダードとされていた「大学受験からの医学部」ではなく、本書は「医学部受験3.0」を推奨している。その大きなメリットは3つ。
■競争社会で子どもたちを疲弊させない
受験は中学受験か高校受験の1回。あとは校内での成績を保つ努力を重ねる。熾烈な医学部受験で子どもを疲弊させない。
■ホスピタリティーが育つ
受験がないからこそ、のびのびと学生生活を送ることができ、部活や習い事などを通して情緒の面でも人間的な成長が期待できる。
■偏差値40レベルの子どもでも、医学部に進学できる
「医学部に合格することは東大に入るより難しい」と一般的にはいわれるが、特に中学受験であれば、「偏差値40」から医学部進学のチャンスがある。
毎年、医学部に受かる人数は全国で約9000名。ただ、医療業界はAI(人工知能)による医療業務が増えると考えられていることから、医学部の募集人員は減少傾向にある。AIが医療現場に入ってきたとき、人間の医師にできるもっとも大切なことは「ホスピタリティー」(心のこもったもてなし)と考えられ、学力だけでなく人間力も問われる入試に変化しつつあるという。
本書には驚きの情報がいくつも出てくるが、思わず「えっ」と声が出たのが授業料だ。たとえば、高校入学と同時に有名医学部専門予備校に入り、浪人2年目で合格を勝ち取った場合。5年間で予備校にかかる費用の総額は、なんと2000万円超。
進学校に入っても、莫大な費用をかけても、何年死にもの狂いで勉強しても、必ず医学部に合格できるとは限らない。過酷極まりない医学部受験の実態が、詳細に書かれている。
「多感でさまざまなことを吸収する10代。そんな大事な時期に、詰め込むだけの勉強をすることが、必ずしも正しいとは思えません」
そして医学部受験における最大の問題は、「学力」。医学部を持つ大学の多くが偏差値60後半から70。これは受験生全体の上位6.7%だ。本書が推奨する「医学部受験3.0」の最大のメリットは、「この『偏差値』という高い壁を楽に乗り越えられること」にある。
たとえば、ある大学の医学部の偏差値は65。しかし、この大学の付属高校の偏差値は57、付属中学となると偏差値は37だ。医学部への推薦入試で、少なくとも毎年10名近くが内部進学しているという。
「『偏差値が足りるかどうか心配だけれど医学部入学を考えている』こんなご家庭こそ、中学受験または高校受験で進学すべきなのです。これこそが、偏差値40台でも、医師にしたい、なりたい、親子の夢をかなえる『特別なルート』なのです」
本書はここから「医大付属中学に絶対受かる勉強法」「子どもを幸せにする塾、不幸にする塾」「医学部合格を確実にする中学・高校受験の合格テクニック」......と、実践的な内容へと続く。
目指す地点は同じでも、どの道をどう歩くかは一通りではない。選択肢は1つでも多く知っておいたほうがいい。わが子を医師にしたい。一方で、わが子を苦しませたくはない。そんな親心に応える「奥の手」は、ぜひ知っておきたい医学部進学ルートの1つだ。
■野田英夫さんプロフィール
受験カウンセラー、MIRAINO教育グループ代表取締役。4月19日(ヨイジュク)、 東京・市ヶ谷に生まれる。大手進学塾の専任講師から支部長、本社経営部門を歴任。在職中はトップ講師として5000名以上の生徒たちを難関校合格に導く。その後、独立し、早慶中学に特化した完全個別指導の「早慶維新塾」を開校。また、2020年には、早慶維新塾のDNAを継承する大学付属校専門塾「早慶ゼロワン」を立ち上げる。現在は、直営とフランチャイズ校で計11教室を運営。2022年、大学受験のいらない医学部受験専門塾「Dr.Aiss(ドクターアイズ)」を開校。著書に『御三家はわかりませんが早慶なら必ず合格させます』(朝日新聞出版)、『中学受験 大学付属校 合格バイブル』(ダイヤモンド社)がある。
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