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鈴木おさむが語る、『ONE PIECE』作者の素顔は「本当にルフィみたいな人」

(企画名)#木曜日は本曜日

 放送作家の鈴木おさむさんにとって、本屋といえば、妻である森三中・大島美幸さんとの「プチデート」の場所だった。

大島さんと結婚してから数年間、(本屋さんに)すごい行ってたんですよ。三軒茶屋に朝4時までやってるTSUTAYAがあって。僕も忙しいから、夜中に帰ってくるじゃないですか。夜中に帰ってきて、奥さんと、夜中に行くメシ屋があって、その後本屋さんに行くっていうのが自分達のプチデートでした。(中略)本屋さんを一緒に回っていると、お互いの趣味がわかったりとか。

 「週に1回、木曜日は街の本屋に足を運んでもらおう」と、東京都書店商業組合が立ち上げたプロジェクト、〈#木曜日は本曜日〉。現在、毎週木曜日に、著名人・インフルエンサー・作家が「人生を変えた本」を紹介する、〈東京○○書店〉が更新中だ。これまでに上白石萌音さん佐久間宣行さん岸田奈美さんらが登場し、それぞれの「人生を変えた本」について語った。

 本屋にはよく「刺激をもらいに行く」という鈴木さん。どんな本に影響を与えられてきたのだろうか。

文字も「騒音」? 当たり前を疑う視点

 鈴木さんが、「全クリエイターの中で一番尊敬している人」と紹介したのが、「ピタゴラスイッチ」「だんご3兄弟」などで知られるクリエイティブディレクター・佐藤雅彦さんの著書『毎月新聞』(中央公論新社)。「毎日新聞」内の月1連載を書籍化したものだ。鈴木さんは、佐藤さんの「モノの考え方」にとても影響されたと話す。

「当たり前の景色を疑う」っていうのが、僕はこの人の真骨頂だと思うんです。

 たとえば、「文字が出す騒音」という一節。書かれているのは、グリーン車と普通の通勤電車の違いだ。広さや快適さが思いつきがちだが、佐藤さんは「(グリーン車には)文字の騒音がない」と書く。確かに電車には至るところに広告の文字がある。耳ではなく目で文字を見ても「騒音」「うるさい」という感覚には、驚かされると同時に納得感がある。

 テレビの画面にも、サイドスーパーなどの文字情報がある。鈴木さんは『毎月新聞』を読んでから、テレビの文字をいかに「騒音」にせずに、たくさんの情報量を届けるかをより意識するようになったと語った。

ONE PIECEは「漫画界の伊勢神宮」

 「(すでに人気が)すごすぎて、入れるか悩んだ」と言って出したのは、『ONE PIECE』(集英社)の最新刊である104巻。国民的マンガのすごさを今改めて語る理由とは?

これだけ長く続けてて、「今が1番面白い」ってすごいと思います。

 一時代にだけ流行する作品はたくさんあるが、『ONE PIECE』は1997年の連載開始以来ずっと支持され続け、面白さを更新し続けている。鈴木さんは、20年に1回建て替えられるため世界遺産にならない伊勢神宮になぞらえ、「『ONE PIECE』も遺産じゃない。"ing(現在進行形)"だ」と熱く語った。

 作者の尾田栄一郎さんとは交流があるそうだ。鈴木さんいわく、「尾田さんって、ルフィみたいな人」。

 尾田さんが入院したとき、笑わせて元気づけるために、鈴木さんはイチゴと一緒に森三中の水着写真集を贈ったそう。すると、のちに鈴木さんが金属アレルギーの発疹で仕事を休んだ際、尾田さんから金属探知機が届いた。「金属アレルギーということで、金属をチェックする物を送ります」「笑いには笑いで返します」という手紙が添えられていたという。

僕は、一流の人っていうのは仕事と関係ないとこも全力だと思ってて。それって、本当にルフィみたいな人じゃない。だから尾田さんの中にルフィがずっといるんだろうし、ルフィの中にずっと尾田栄一郎がいるというか。

 名作を生み出し続ける尾田さんの人柄がうかがえる、貴重なエピソードだ。

本屋の立ち読みからあの人気コーナーが生まれた!

 動画後半では、東京都大田区にある「藤乃屋書店」へ。本屋では、今注目されている話題や普段の生活で見ることがない言葉などに刺激され、企画につなげているという鈴木さん。実は、テレビ朝日系「お願い!ランキング」内の、食のプロが有名企業の食品を試食してランキングをつける人気企画「美食アカデミー」は、本屋で出合った『家電批評』(晋遊舎)から生まれたのだそうだ。

(『家電批評』が)いいのは、ダメ出ししてるだけじゃなくていいモノも言ってるから、つまり1番信憑性がある。そこで、テレビっていいモノしか言わないから、ダメ出しもすることによっていいモノに対して信憑性を持たせようと。
『家電批評』を、ある時本屋さんで見て「うわぁすごい!こんなのあるんだ!」みたいな。(そこから企画を思いついたのは)これは本当です。

 なんと、あの人気コーナーも本屋から生まれたものだった。


〈鈴木おさむさんの「人生を変えた本」10冊〉

『羅生門・鼻』芥川龍之介(新潮社)
『浅草キッド』ビートたけし(講談社)
『遺書』松本人志(朝日新聞出版)
『毎月新聞』佐藤雅彦(中央公論新社)
『闇の子供たち』梁石日(幻冬舎)
『ONE PIECE 104』尾田栄一郎(集英社)
『GEQ 大地震』柴田哲孝(KADOKAWA)
『映画を撮りながら考えたこと』是枝裕和(ミシマ社)
『かくかくしかじか』東村アキコ(集英社)
『ラブレター』幡野広志(ネコノス)

 著名人の本が多く並ぶが、中には人身売買や地震を描いた社会派の作品も。鈴木さんのクリエイティブ哲学の源流が見える。

 〈東京○○書店〉は毎週木曜日に更新される。来週は誰の書店が開店するのだろうか。

 〈#木曜日は本曜日〉公式サイトはこちら。→https://honyoubi.com/

 また、東京の各書店では〈#木曜日は本曜日〉オリジナルデザインのしおりを配布している。配布店舗の一覧はこちら。→https://honyoubi.com/assets/data/present_shoplist.pdf

〈東京鈴木おさむ書店〉しおりデザイン
〈東京鈴木おさむ書店〉しおりデザイン

■鈴木おさむさんプロフィール
すずき・おさむ/1972年生まれ。放送作家。多数の人気番組の企画・構成・演出を手がけるほか、小説『芸人交換日記~イエローハーツの物語~』『名刺ゲーム』、エッセイ『ブスの瞳に恋してる』、ドラマ「奪い愛、冬」「M 愛すべき人がいて」の脚本の執筆など多岐にわたり活躍。


※画像提供:東京都書店商業組合




 


  • 書名 (企画名)#木曜日は本曜日
  • 出版社名 (主催)東京都書店商業組合

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