「私は『BDD』なの」――。
2021年10月、映画『トランスフォーマー』への出演で知られるハリウッド女優ミーガン・フォックスさんが、雑誌 『ブリティッシュGQ』のインタビューのなかで、自分が「BDD」という障害を抱えていることを告白した。
「BDD(Body Dysmorphic Disorder)」とは、日本では「身体醜形症」とも呼ばれる精神障害の一つ。2023年4月5日に発売された、精神科医・中嶋英雄さんの新著『自分の見た目が許せない人への処方箋 こころの病「身体醜形症」の治し方』(小学館)は、この「身体醜形症」の実態と対処法について詳しく解説している。
自分の顔が嫌いなせいで、人生がつらすぎる。顔が気になって、何十時間も鏡を見つづけてしまう。メイクに何時間も費やす。髪形の小さな乱れが気になる。とにかく人の目が怖いから、学校にもバイトにも行けない。人に会うと顔を評価されている気がする。家族や友人からは「思い込みだよ」「気にしすぎだよ」と言われるが、とにかく整形して、この顔をなんとかしたい――。
このように、自分の「顔」や「見た目」に過剰なコンプレックスを抱くのが、「身体醜形症」の症状だ。ほかにも、美容整形を繰り返すうちに整形依存になるケースもある。
「顔の悩み」は、思春期の女性特有の病だろう......と偏見を持たれがちだが、実は40代、50代で発症する場合もあり、男女比も1対3ほどで、男性でも苦しんでいる人は多い。アメリカでは人口あたり2〜3%、つまり数百万人が発症しているという。おじさんから女子高生まで、誰がなってもおかしくない病なのだ。
フォックスさんの例からもわかる通り、この障害の本質は「こころ」の部分にあり、その人が実際に「美しい」かどうかは関係ない。実際、元形成外科医でもある中嶋さんは、たとえ美容整形をしても、患者が「整形した自分」を受け入れることができず、整形を何度も繰り返す整形依存に陥ってしまうケースを度々見てきたという。
こう聞くと「美容整形をしても心の病は解決しないからやめた方がいい」という考えも出てきそうだが、中嶋さんはそのような安直な発想も否定している。
(前略)私は元形成外科医として、美容整形も、ときには利用したらいいと思っています。もちろん、誰にでもすぐお勧めするわけではないですが、美容整形によって救われる方もたくさんいるからです。(中嶋さん)
美容整形で悩みが解決する場合もあれば、むしろ悪化してしまう場合もある。それでは、その違いはどう見わければいいのか。本書では、精神科医と形成外科医の両方の免許をもつ中嶋さんが、その区別に役立つ「身体醜形症」の実態と対処法を、美容形成外科学と精神心理学の両面から解説している。
容姿に悩み、整形を考えているすべての人にオススメしたい1冊だ。
【目次】
はじめに その苦しみは「身体醜形症」かもしれない
序章 「自分が醜い」という気持ちから逃れられない人へ
第1章 本当に醜いわけではない──身体醜形症にまつわる誤解
第2章 身体醜形症になりやすい人には6つのタイプがある
第3章 身体醜形症を克服する──あるがままの自分を好きになる処方箋
第4章 それでも整形するのはNGですか?──身体醜形症と美容整形 おわりに
■中嶋英雄さんプロフィール
なかじま・ひでお/精神科医、形成外科医。1973年慶應義塾大学医学部卒業。日本精神神経科学会会員、日本形成外科学会会員、同評議員、理事歴任。日本頭蓋顎顔面外科学会会員、評議員、理事歴任。1983 年慶應義塾大学医学部形成外科学専任講師、1988〜2010 年同助教授、准教授、2010 から精神科に転科し群馬病院勤務。現在は美容整心メンタル科を掲げ、身体醜形症、不安症などの神経症、整形依存、パーソナリティ障害の治療をクリニークデュボワで対面診療を、美容整心メンタルクリニックで遠隔診療をおこなっている。著書に『ほんとうに美しくなるための医学』(アートデイズ出版)がある。
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