全国の書店員が一番売りたい本を投票で選ぶ、「2023年本屋大賞」。2023年4月12日、大賞が発表され、凪良ゆうさんの『汝、星のごとく』(講談社)が受賞した。
凪良さんは2020年に『流浪の月』(東京創元社)で本屋大賞を受賞しており、今回で2度目の受賞となった。
物語は、瀬戸内海の島から始まる。主人公は、島で生まれ育ち、不倫をしている父親と心を病む母親の板挟みになっている暁海(あきみ)と、付き合っている男性を追いかける母親とともに京都から引っ越してきた櫂(かい)。親に振り回され孤独を抱えた2人は、出会って惹かれ合い、やがて恋人同士となる。
高校卒業後2人は島を出たいと思っていたが、暁海の母の容体が悪くなり、櫂だけが上京することに。櫂は漫画家となってヒット作を飛ばし、都会の日常に染まっていく一方で、暁海は男女格差の激しい職場で、余裕のない日々を送る。2人の価値観は徐々にかけ離れ、すれ違っていく。恋人同士の関係性の変化を語りながら、ヤングケアラー、格差社会、さらにLGBTQなど、多様な社会問題を描き込んだ作品。ラストで2人がたどり着く"愛"のかたちとは。
2020年は緊急事態宣言と重なり、授賞式に出席できなかった凪良さん。翌日から休業する書店も多く、投票してくれた書店員にも直接感謝を伝えられなかった。その悔いがあり、『汝、星のごとく』の刊行時には、全国の書店を回って3年前の感謝を伝えたそう。「こんなにたくさんの書店員さんが応援してくれているのだと思ったら、(当時授賞式には出られなかったが)"これでいい"と納得した。だから今、受賞者としてここに立っているのが夢のよう」と、涙ながらに語った。
BOOKウォッチでは、過去に書評を掲載している。
〈凪良ゆう最新作は、「恋愛小説」の枠にはまらない「愛」の物語〉
また、翻訳小説部門1位は『われら闇より天を見る』(クリス・ウィタカー 著・鈴木恵 訳、早川書房)、「超発掘本!」部門は『おちくぼ姫』(田辺聖子 著、KADOKAWA)が受賞した。
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