本を知る。本で知る。

知ることで、世界が広がる「神様仏様」に関する本

物語と挿絵で楽しむ聖書

 正月には初詣をし、実家へ帰れば仏壇に手を合わせ、クリスマスには「聖夜」を祝う。とくに信心深くはないけれど、年に何度かは神様仏様を拝んでいる。そんな具合だから、それぞれの宗教についての知識はかなり怪しい。そこで今回は、宗教という深淵な世界の入口をのぞくことができる、「神様仏様」に関する本を紹介しよう。

神主さんのお仕事って?

『神主はつらいよ――とある小さな神社のあまから業務日誌』

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新井俊邦 著/自由国民社

 神主さんって初詣や七五三の時以外に何してるの? 収入は? やっぱり、すごく禁欲的だったりするのかしら......? そんな素朴な疑問に対するトホホな回答が面白い。50歳の時、大手部品メーカーのエンジニアから神主に「転職」した著者の新井さん。賽銭泥棒の被害に遭ったり、メルカリに御朱印を出品されたり、台風で神社の屋根が飛んでしまったり、想定外の出来事に右往左往する神主さんの日常が綴られている。(N)

紹介記事はこちら→副業して食つなぐ神主、メルカリに出品される御朱印...。アマくなかった神主の日常へようこそ



現代に生きるブッダの教え

『一日一生』

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酒井雄哉 著/朝日新聞出版

 比叡山の峰々を1000日かけて約4万キロ歩く「千日回峰行(せんにちかいほうぎょう)」を2度満行し、2013年に87歳で亡くなった酒井雄哉(さかい ゆうさい)・天台宗大阿闍梨(だいあじゃり)。本書は「現代の"生き仏"からのメッセージ」として2008年に刊行された言葉集。20万部を突破するベストセラーとなった。 毎朝、草鞋(わらじ)を履いて出て行き、一日山を歩き通して帰ってくると、草鞋がボロボロになっている。翌日、また新しい草鞋を履く。それを繰り返すうちに、草鞋が自分に見えてきたという。「今日の自分は今日でおしまい。明日はまた新しい自分が生まれてくる。一日が一生、だな。」
 当時買った本を見て、あぁ...あのときの自分はこんな感じだったな、と思い出すことがある。なんとなく繰り返しの毎日に停滞気味だった20代半ば、書店をぷらぷらしていたら目に留まった。いくつになって読んでも原点に立ち返った気持ちになれる、自分の中で色あせない1冊。(M)


『ネットカルマ  邪悪なバーチャル世界からの脱出』

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佐々木 閑 著/KADOKAWA

 京都大の工学部を卒業した後に、文学部哲学科仏教学に移った著者の本。ネット社会の現代にあって、デジタル空間に残り続ける自分の記録が、仏教でいう業(ごう=カルマ)となって永遠に自分をさいなみ続ける状況が生まれた。そのことを仏陀は見通していたかのように、そこから解き放す心の在り方を説いているという内容。ネットの世界の便利さの裏腹にある邪悪さも感じていたとき、思わず手に取った。
 「自分を苦しめず、他者を傷つけることもない、そんな言葉だけを語れ」。数々の仏陀の言葉がまるでSNS時代の今にめがけて語られたように思えた。(S)

書評はこちら→ネットの誹謗中傷、「ブッダ」が見たら何という?



『いつか死ぬ、それまで生きる わたしのお経』

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伊藤比呂美 著/朝日新聞出版

 詩人の伊藤比呂美さんによる大胆なお経の現代語訳。両親と夫を看取る中でお経に出合った伊藤さん。BOOKウォッチのインタビューで、「ずっといがみ合っていた連れ合い」が亡くなった時に底知れない空虚さに襲われ、「今考えると、無我夢中でお経に取り組むことで、あの真空管の中みたいな無音の寂寥を、必死に忘れようとしてた」と語っていたのが印象的で、いつか頼ることになるのかも、とお経に(ちょっぴり)興味が湧いた。伊藤さんによるお経の朗読CD付き。(N)

インタビューはこちら→「夫に看取ってもらう」はファンタジー。「ひとり」が怖い50代のあなたへ――伊藤比呂美さんインタビュー



キリスト教の入門書

『物語と挿絵で楽しむ聖書』

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古川順弘 著、宇野亞喜良 絵/ナツメ社

 聖書を教養として学びたいと思っていた時に、書店で、宇野亞喜良さんの美しい絵に惹かれて手に取った。旧約聖書・新約聖書の概要を、時代背景やパレスチナの風土・文化にも触れながら解説している。難しすぎずわかりやすく、でも簡単すぎず詳細で、入門にはぴったりの本だと思う。(H)


『旧約聖書がわかる本 〈対話〉でひもとくその世界』

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並木浩一、奥泉光 著/河出書房

 キリスト教の元になったユダヤ教の経典でもある旧約聖書は、その片々は聞いたことがあっても、日本人にはなじみが薄い。その研究家である「先生」に、大学時代に「学生」として学んだ小説家が、あらためて対談形式で「神について何が書かれている世界なのか」を明らかにしている。キリスト教やユダヤ教の原点となっている「神」に対して、旧約聖書に登場する人間は意外にも質問したり、反論したりする。イスラエル=ユダヤ民族とは何かについての言及もある。漠としていた「西洋の神様」のイメージがつかめる本。(S)


まさに神々の集い

『聖☆おにいさん』

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中村光 作/講談社

 2006年から現在まで連載されているコメディ漫画。世紀末を無事乗り越えたブッダとイエス・キリストが、有休をとって下界でのバカンスを満喫しようと、日本の東京都立川でルームシェアして暮らすという設定。ストーリーや登場人物のあちこちに、仏教、キリスト教に関する情報がコメディタッチで出てきて、笑いながら宗教の歴史に興味が湧いてくる。 ちなみに、アニメ版ではブッダの声を星野源、イエスの声を森山未來。実写版ではブッダ役を染谷翔太、イエス役を松山ケンイチがそれぞれ演じている。豪華な顔ぶれは、まさに神々の集い。(O)


イスラームの過激なお悩み相談?!

『13歳からの世界征服』

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中田考 著/百万年書房

 コロナ禍の自粛期間中に本屋で見かけて「ジャケ買い」した。イスラーム法学者の中田さんが、日本の子どもたちのお悩みにイスラームの教えをベースに回答していく。タイトルは過激だが、まっとうな内容(回答はぶっ飛んだものも多いが...)で、テンポ良く読み進められるし、読後の爽快感は何とも言えない。とうてい理解しがたいと思っていた行動のもとになっている考え方(神様の教え)を知ることができる。同じ著者が書いている『70歳からの世界征服』も秀逸。(O)


この現実もカルトかも

『信仰』

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村田沙耶香 著/文藝春秋

 小説とエッセイ計8篇からなる短編集。表題作の主人公・ミキは、筋金入りの現実主義者で、口癖は「原価いくら?」。ある時、中学時代の同級生に呼び出され、「一緒にカルトを始めて一儲けしよう」と誘われる。はじめはバカにしていたが、計画に参加する別の同級生を見ているうちに、「洗脳されてみたい」と思うようになり......。読んでいるうちに「私が生きているこの現実も、ある種のカルトなのでは?」と不安な気持ちになってくる。(H)

書評はこちら→「私のこと洗脳して」カルトか、現実か。価値観を揺るがす、村田沙耶香の問題作



日本人はマイノリティ

『世界がもし100人の村だったら』

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池田香代子 著/マガジンハウス

 シリーズ本も含めて、何度も読み返した本の1つ。100人のうち33人がキリスト教、19人がイスラーム教、13人がヒンドゥー教、6人が仏教を信仰している、というフレーズを暗記しているほど。
 日本人である自分は、世界的に見たらこんなにもマイノリティな存在であること、自分とは違う考えを持つ(宗教を信仰している)人がいるという当たり前の事実、そして、「神様」という言葉一つとっても、世界が変われば対象や意味も変わってくるのだということを教わった。(O)






 


  • 書名 物語と挿絵で楽しむ聖書
  • 監修・編集・著者名古川順弘 著、宇野亞喜良 絵
  • 出版社名ナツメ社
  • 出版年月日2016年4月 7日
  • 定価1,650 円 (税込)
  • ISBN9784816360251

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