レジャーに出かけるのもためらうほどの酷暑。今年の夏休みはいっそ、おうちで読書をして過ごすのはいかが? ちょっといいホテルにおこもりして本を読みふける、なんていうのも贅沢な過ごし方だ。そこで今回は、BOOKウォッチ編集部のメンバーが選んだ、夏の読書にぴったりな本を紹介しよう。
『成瀬は天下を取りにいく』
最近読んではまった1冊。ランキングで見かけたり、帯に著名人のコメントがズラリと並んでいたりして、なにやら盛り上がっているなと気になっていた。
2020年8月31日に閉店した西武大津店。その1ヶ月前、主人公・成瀬あかりは中2の夏休みを西武に捧げることを決め、ある計画を実行する――。相当な変わり者で、突飛な行動に毎度驚かされるが、成瀬というキャラクターに心をわしづかみにされた。今日も大津周辺で、なにかしら面白い挑戦をしていそうな気がする。
わたしは子どものころ、毎年夏休みになると島根に行っていたのだが、島根県唯一の百貨店が来年閉店するということでショックを受けている。そんなときに本書を読んでよかった。終わりから始まるこの物語に、元気をもらった。成瀬との出会いは、今夏の1つの印象的な出来事となった。(Yukako)
書評はこちら→何度でも会いたくなる最高の主人公。物語の力を感じる、今注目の小説です。
『夜の虹の向こうへ』
自然写真家、高砂淳二さんのフォトエッセイ集。高砂さんを一躍有名にした写真集『night rainbow 祝福の虹』ができるまでとその後のエピソードが、美しい写真とともに綴られている。
古代ハワイの智恵を伝えるハワイアン、カイポさんに弟子入りし、自然と人との関わりや、アロハの精神を学んでいた高砂さん。カイポさんから、月の光に照らされてごくまれに現れる夜の虹(night rainbow)の話を聞いた3日ほど後、撮影帰りに偶然、夜の虹に遭遇する。それからというもの、「この世の最高の祝福」と言われる夜の虹を追い求めてハワイに通い詰め、さらにはケニア、アメリカ、ニュージーランド、アイルランドなど、世界各地で神秘的な風景をカメラに収めていった。その過程で出会った人々とのエピソードにも心が洗われる。
毎年、高砂さんのカレンダーを買っているが、なぜこんなに奇跡のような瞬間を撮れるのか不思議だった。本書を読めば、その理由がわかる。渋くてカッコいいカイポさんの写真も必見。(Mori)
『オオルリ流星群』
高校生の夏、空き缶1万個を使って巨大なタペストリーを制作した同級生5人。28年後、45歳になって再会した彼らは、地元に手作りの天文台を建てるため、再び力を合わせることに。それをきっかけに、あの夏に起きたことの真実が明らかになっていく――。
人生折り返し地点を迎えてなんとなく行き詰まりを感じたら、はるか宇宙のかなたへ目を向けてみるのもいいかもしれない。あの夏は二度と戻ってこないけれど、何度でも新しい夏は訪れる、そんなふうに思わせてくれる作品。
伊予原さんは作家になる前、地球惑星科学の研究をしていたという。知識に裏付けられた天文に関する描写も読みどころのひとつ。(Mori)
書評はこちら→40代。行き詰まりを感じるあなたに、読んでほしい本です。
『真夏の方程式』
小説・ドラマ・映画いずれも大ヒットしている「ガリレオ」シリーズの第6弾。真夏に美しい海辺の町・玻璃ヶ浦で起きた殺人事件の解決に、主人公の物理学者・湯川が向かっていく。玻璃ヶ浦の1人の少年との交流が物語の軸となっており、シリーズの他の作品とはひと味違う湯川の魅力が味わえる。
ジリジリとした真夏の日差しを体感できる表現が秀逸で、どこか爽やかな風を思わせる湯川の佇まいとのコントラストもおもしろい(とにかく福山雅治がカッコいい......)。(Satoshi)
『恋愛寫眞(しゃしん) もうひとつの物語』
玉木宏、宮崎あおい主演で「ただ、君を愛してる」として映画化された恋愛小説。同じ著者の作品『いま、会いに行きます』とはまた違う、プラトニックな関係ながら、深い愛を感じる男女のやり取りが心地よく、一気に読んでしまう。
「夏に読みたい」というテーマで思い浮かべたものの、作中にはそれほど夏の描写は出てこないので、なぜだろう?と考えてみると、映画のメインビジュアルとなっている森の中でのキスシーンが、夏の朝の日差しを思わせる雰囲気で記憶に残っていたからだった。映画公開当時、大学1年だった私。男3人でこの映画を見て、3人ともラスト20分で号泣していたのは、これまた汗臭い思い出の1つです。笑(Satoshi)
『続・日本現代怪異事典』
夏といえば怪談! 怪談本やインターネット上の都市伝説を中心に、1000以上もの「怪異」の話を集めた一冊。『日本現代怪異事典』はこっくりさんや口裂け女などメジャーな話を載せているのに対して、続編のこちらは「窓から首ヒョコヒョコ女」「血まみれセーラー服」「幽体離脱に負けた霊」などマイナーな話がたくさん収められている。怪談マニアでも知らなかった怖い話に出合えるはず。(Hariki)
朝里さんの対談記事はこちら→【オカルト対談】あの覆面作家がwebムー編集長に語った「怪異よりも怖いもの」って?
『八月の砲声』
1914年の第1次世界大戦の発端から泥沼の展開を追った戦争ノンフィクションで、ピュリッツァー賞も受賞した大作。勃発からちょうど100年となる2014年に「ちくま学芸文庫」上下2冊を読み、その内容に圧倒された。かのケネディ米大統領がキューバ危機の際に読み、他の米国高官にも勧めて、核戦争の危機を乗り切ったという逸話も有名だ。日本では毎年8月に戦争関連の報道があふれかえる「8月ジャーナリズム」と揶揄されることもあるが、やはり戦争についてじっくり考える季節があることは貴重だ。本書に登場する国々の多くは、現在のウクライナの戦火をめぐっても名前が出てくる。まさかこんな戦争になるとは誰も思っていなかった戦争が起きた、という教訓は生かされるのか。暑い夏になると、また読まなくてはと思い出す本のひとつ。(N.S.)
『H2』
小学生のころに連載を読んでいたが、30半ばになった今も夏になると読みたくなる。それは、自分もかつて目指していた甲子園が舞台になっているからではなく、綺麗な幼なじみと可愛いマネージャーという2人の女性の間で揺れる主人公・国見比呂への羨望と憎悪が強いからだと思う。誰かが言っていた、「あだち充の作品は野球漫画じゃない、恋愛漫画だ」と。まさにその通り。あえて付け加えるなら「ただの恋愛漫画じゃない!リア充だらけの恋愛漫画だ!」と叫びたい。(Satoshi)
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