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西加奈子5年ぶりの短編集は、「わたし」を生きる勇気をくれる8編

わたしに会いたい

 カナダでのがん治療をつづったエッセイ『くもをさがす』(河出書房新社)で話題の西加奈子さんによる、5年ぶりの短編小説集『わたしに会いたい』(集英社)が、2023年11月2日に発売される。

西加奈子さん 撮影/中川真人さん(CUBISM)
西加奈子さん 撮影/中川真人さん(CUBISM)

 本書に収録されているのは、2019年からがん治療をおこなった2022年にかけて発表された7編と、書き下ろしの1編。発売に先駆けて、表題作「わたしに会いたい」が本書特設サイトと各電子書籍書店で全文無料公開中だ。

 「わたしに会いたい」は、主人公のわたしの5歳の頃の回想から始まる。わたしは上に3人の姉がいるが全員父親が違い、姉妹で1人だけとても体が小さいわたしは姉たちによくからかわれていた。近くに住む4歳上のいとこのモトだけが心許せる相手で、毎日のように家に遊びに行っていた。

 ある日わたしは病院で、骨が変形していると診断される。歩き方は生涯なおらず、背丈も途中で止まってしまうという。母親のショックを受けた様子を見、姉たちから散々な言い方をされたあとで、わたしはモトの家へ行った。するとモトは、さっきもう一人の「わたし」=ドッペルゲンガーを見たと言う。

 その日から、わたしがつらい思いをすると近くに「わたし」が現れるようになった。でも、わたしは決まって「わたし」に会えない。モトは「ドッペルゲンガーに会うと死んでしまう」と言うが、わたしは「わたし」に会いたいと思う。わたしとモトは、「わたし」とはいったいどういう存在なのかを考え始める。

 「わたし」の存在に勇気をもらって突き進む主人公の姿がすがすがしい。ドッペルゲンガーは少し怖いけれど、こんな存在なら現れてみてほしい気もする。特設サイトでは、ハッシュタグ「#Imissme」でX(旧Twitter)での感想を募集している。

 表題作のほか、収録作品はどれも「わたし」の体を生きることを見つめる物語だという。自分を愛し、生きていく力をもらえる一冊だ。

〈西加奈子さん直筆メッセージ〉

一編書くたびに、生まれ変わったような気持ちになりました。皆さんに何をお渡し出来るのかは分かりませんが、この本は、最先端の私の生そのものです。西加奈子
【収録作品】
「わたしに会いたい」/「あなたの中から」/「VIO」/「あらわ」/「掌」/「Crazy In Love」/「ママと戦う」/「チェンジ」(書き下ろし)

■西加奈子さんプロフィール
にし・かなこ/1977年イラン・テヘラン生まれ。エジプト・カイロ、大阪府で育つ。 2004年に『あおい』でデビュー。 07年『通天閣』で織田作之助賞、 13年『ふくわらい』で河合隼雄物語賞、15年に『サラバ!』で直木賞を受賞。著書に『さくら』『円卓』『漁港の肉子ちゃん』『ふる』『まく子』『i』『おまじない』など多数。本年4月に刊行した初のノンフィクション『くもをさがす』が話題。


※画像提供:集英社


    
  • 書名 わたしに会いたい
  • 監修・編集・著者名西 加奈子 著
  • 出版社名集英社
  • 出版年月日2023年11月 2日
  • 定価1,540円(税込)
  • 判型・ページ数四六判・224ページ(予定)
  • ISBN9784087718492

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