自分の「好きのかたち」を知っている人は、強い。
一つの「好き」を深める人もいれば、広くさまざまな物事に「好き」を見つける人もいる。モデルの高垣麗子さんは、後者だ。
14歳でデビューしてから29年。さまざまな女性誌の中で、時代とともに移り変わる女性の価値観を体現してきた。この春、4年間務めた雑誌『STORY』のカバーモデルを卒業。新たなステージへと踏み出した。
その第一歩になったのが、9月に発売された著書、『わたしの好きのかたち』(光文社)だ。全編書き下ろしのエッセイ集には、50以上もの「好き」とその理由がつづられている。そこから見えてくる高垣さんの素顔とは。本書に込めた思いをうかがった。
――セレブな日常を想像していたのですが、高垣さんの「好きのかたち」を知って、ぐんと身近な存在に感じました。
嬉しいです。職業柄、キラキラした世界の住人のように思われることも多いのですが、私もひとりの女性として、働くシングルマザーとして、日々泣いたり笑ったりしながら生きています。そんなありふれた日常を、皆さんに知っていただきたかったんです。
「高垣麗子って本当はどんな人?」って聞かれたら、「この一冊にすべてが詰まっています」と言えるくらい、何も飾らず、包み隠さず、今の思いを書きました。
――それにしても、こんなにたくさんの「好き」を集めて文章にするのは、たいへんだったでしょう。
私はたぶん、「好き」のハードルが人より低いと思うんですよね。今回あらためて振り返ってみたら、好きだなと思う瞬間や物事が、ものすごくたくさんあったんです。
わかりやすいものもあれば、私にしかわからないような地味~な「好き」も。そこには必ず理由があって、掘り下げて初めて気づいたこともありました。
――たとえば、どのような?
祖父や祖母から影響を受けていることが、意外とたくさんあったんだなぁ、と。コーヒーだったりカメラだったり、今では私にとって日常の一部になっているのですが、どちらも祖父が好きだったものです。
食べることが好きなのはおばあちゃん譲り。ホットケーキが好きなのも、子どもの頃に祖母が作ってくれた記憶が焼き付いているからだと思います。私ってけっこう、おじいちゃん子、おばあちゃん子だったんだなって気がつきました。
――おばあ様のことも書かれていますね。高垣さんが再婚を決め、おばあ様に報告した時のエピソードに涙が出そうになりました。
私は2度の離婚を経験しているのですが、最初の時、祖母がすごく心配してくれていることは、母や叔母から聞いていたんです。でも、私に直接理由を尋ねてくることはなく、私からも細かなことは伝えられずにいました。
再婚の報告に行った時には、祖母はもう寝たきりで会話も難しくなっていたのですが、一言、「安心した」と。最後に自分の言葉で伝えることができたし、祖母の言葉も聞けて本当に良かった。その時、私は幸せでいないといけないし、そうありたいと強く思いました。
――今では6歳の娘のなっちゃんと2人、幸せに暮らしている様子が伝わってきます。母になることで、「好きのかたち」に変化はありましたか?
ずっと好きなものは変わらずにあるのですが、娘のおかげで新しい「好き」が加わりました。出かける場所も変わりましたし、子どもの目線で物事を考えてみることも増えました。
何より新鮮だったのは、今まで経験したことのなかった感情が芽生えたこと。本にも書いたのですが、娘の存在は、私を強くも弱くもさせます。娘が私の世界を広げてくれたことは、間違いないです。
――「涙腺が弱くなった」ともありますね。なっちゃんがママの涙をふいてあげている写真が、とっても微笑ましいです。
私の誕生日に、娘がサプライズで手紙と工作をプレゼントしてくれたんです。嬉しくて泣いちゃいました。でも、娘は笑ってるんですよ。私が泣くといつも、「ママ泣いてる~」って喜ぶので(笑)。
――「無難な人生よりも難ある方が魅力的な人生を送ることができるのかもしれない」という一節が印象的でした。たおやかに見えて、実はすごく強い方なんだなあ、と。
本当にいろいろありました(笑)。だからこそ、思うんです。結婚していてもいなくても、子どもがいてもいなくても、自分を幸せにできるのはやっぱり自分次第かなって。
本を書くことで、好きなものが多ければ多いほど、それは「強み」になるんだと実感しました。好きなことを大切にしていたら毎日が楽しいし、何かあった時に強い自分でいられるんじゃないかなと思います。この本を読んでくださった方が、ご自分の「好き」と向き合うきっかけになったら嬉しいです。皆さんも人生いろいろ、おありだと思うんですけど......ね。
――来年はデビュー30周年を迎えられます。今後の目標は?
これからもモデルを続けられるのなら、ずっと続けていきたいと思っています。おばあちゃんになっても、需要があれば(笑)。
モデルという仕事はファッションだけじゃなくて、ライフスタイルや生き方を見せていくという側面もあります。これからも、自分の生き方を何らかのかたちでシェアできたらいいなと思っています。そのためにも、日々を大切に生きていきたいです。
「人見知りなので」と言いながらも気負いなく、笑顔で取材に応じてくれた高垣さん。彼女の「好き」は脈絡がないようでいて、一本の芯が通っている。これから先、より成熟した女性の生き方を表現していく中で、彼女の「好きのかたち」がどう変化していくのか、楽しみだ。
■高垣麗子さんプロフィール
たかがき・れいこ/1979年、東京都中野区生まれ。『プチセブン』専属モデルとして1994年にモデルデビュー。
以来29年間、ファッションモデルとして女性誌を中心に数々の媒体に登場。『STORY』ではカバーモデルを務めた。
ハッピー感のある笑顔やライフスタイルは多くの支持を集める。食べることが大好きで、発酵食品マイスターなどの資格を持つ。2017年に女児を出産。
Instagram @reikotakagaki
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