近年、生涯未婚や、結婚していても子どもを持たない選択をする女性が増えてきた。一方で、「子どもは産むべき」「子どもがいない女性はかわいそう」といった価値観もいまだ根強い。
「母親」をめぐる価値観の分断はいつ、どうして始まったのだろうか。歴史をたどり、現代の「母親」の常識を考え直す本『それでも母親になるべきですか』(新潮社)が、2023年11月22日に発売された。
著者の歴史学者ペギー・オドネル・へフィントンさんは、2016年に米陸軍士官学校へ赴任した際、校内での価値観と自分との間にギャップを感じた。ペギーさんの友人の間では、出産は「後回しにすること」だと考えられていた。ところが士官学校では、30歳で3人目を妊娠という妻が珍しくなく、「多産祝い」の会まで開かれていたという。
「女性は子どもを産み、母になるべき」という価値観は、一見伝統的なもののように思えるが、歴史をさかのぼると実は比較的最近つくられたものだという。本書では、避妊・中絶の歴史、産業の発展、環境と人口、医療の発達など、さまざまな切り口から、産む女性と産まない女性の分断がどのように形づくられていったかを解説している。
ペギーさんは、子どもを持たない女性を指す言葉がなく、「子どもを持たない」「母ではない」という打ち消しでしか言い表せないことを問題視している。世の中で議論が進めば、適切な呼び名が見つかるかもしれない。これからの女性と「母親」のために、新しい考え方を示す一冊。
【目次】
はじめに
イントロダクション:私たちは子どもを産みません。なぜなら......
1章 いつも選択してきたから
2章 助けてくれる人がいないから
3章 すべてを手に入れるのは無理だから
4章 地球環境が心配だから
5章 物理的に無理だから
6章 子を持つ以外の人生を歩みたいから
結論:では......すみませんが、「産むべき理由」を教えてもらえますか?
〈著者プロフィール〉
■著:ペギー・オドネル・へフィントンさん
作家。カリフォルニア大学バークレー校で歴史学博士号を取得。米陸軍士官学校に博士研究員として勤務後、シカゴ大学へ。ジェンダーや母性、人権等の歴史を教えるほか、エッセイや論文を多数発表。本書が初の著書。
■訳:鹿田昌美さん
しかた・まさみ/小説、ビジネス書、絵本、子育て本など、70冊以上の翻訳を手掛ける。近年の担当書に『母親になって後悔してる』(オルナ・ドーナト著、新潮社)、『なぜ男女の賃金に格差があるのか 女性の生き方の経済学』(クラウディア・ゴールディン著、慶應義塾大学出版会)などがあるほか、著書に『「自宅だけ」でここまでできる!「子ども英語」超自習法』(飛鳥新社)がある。
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