2023年12月9日、古代文学研究家で東京大学教授でもある高木和子さんの著書『源氏物語の作者を知っていますか』(大和書房)が発売された。
本書は、知っているようで知らない『源氏物語』成立の経緯を丁寧にひもとく解説書。不遇な中流貴族の娘がなぜ、世界屈指の物語を書くことができたのか。そして、紫式部は何がどうすごかったのか、何を書こうとしたのか。一千年も読み継がれている人気の秘密と謎を解き明かしていく内容となっている。
本文では、『源氏物語』の前提にあった、紫式部が経験した平安社会と文化の実像も解説。多感な少女時代、一家の凋落、夫との死別、中宮の女房への抜擢、不慣れな宮仕え、宮廷内の権謀術数、皇統の行方......などなど、「平安のリアル」もわかりやすく、おもしろく理解できる。
さらに、男女の必須教養から、和歌の歌体、大和絵の描写方法、当時の恋愛、儀礼、天皇家と藤原氏のつながりまでを、豊富な図解・イラストで紹介。紫式部と道長の関係や、紫式部が清少納言に苛立ったのはなぜかなど、複雑な心境が吐露される『紫式部日記』から、道長絶頂期の真実を明らかにする。
『源氏物語』なんて読んだことない、という人でもわかるように、五十四帖分のあらすじを一気に紹介。作品に託された思い、一歩踏み込んだ味わい方、初心者向け入門書案内と、知っておきたい基礎知識も満載。来年の大河ドラマ『光る君へ』の予習に最適の1冊だ。
【目次】
はじめに――『源氏物語』成立のオモテを読み、ウラを読む
第1章 平安時代を覗いてみませんか
●知るほど不思議な平安朝の文化――漢字と仮名と絵と
●恨みを抱えて死んだ者たち――政治の勝者と敗者
●妻は複数で当たり前?――多情な男に悩まされる女たち
●藤原道長の権勢極まる――時代を創った怪物
●まがまがしい京のまち――「もの」と病、そして......
第2章 『源氏物語』構想の日々
●漢学の素養をもつ娘――紫式部の生い立ち
●父に付いて京を離れ――越前に下った経緯
●年の離れた男との結婚――出会いと別れ
●彰子のもとに女房として仕える――馴染めなかった初出仕
第3章 独り心浮かれぬ回想録
●渡る世間は鬼ばかり?――本意ならぬ人生
●男子を産まねばならない重圧――彰子出産の記録
●明日知れぬ流れに身を任せながら――運命に翻弄される憂い
●藤原道長と紫式部――日記が語る深淵なる関係
●なぜ清少納言に苛立ったのか――世の人に言いたい
第4章 『源氏物語』の世界に分け入る
●冊子制作を始めるころ――研究史の上で重要な一言
●『源氏物語』の作者ということ――はかなき物語
●光源氏というスーパースター――知ってるようで知らない
●あらすじで読む『源氏物語』――読み始めたら、もうやめられない
第5章 読む楽しみは尽きない
●四人の貴公子による恋愛談義――長編化の原動力
●宿世遠かりけり――物語の軸となる課題
●やはり滅法おもしろい――恋の残酷
●すこぶる華やかな光源氏絶頂期――六条院の王権
●すべての歯車が狂っていく――憂愁の晩年
●「宇治十帖」という陰――次世代の物語
■高木和子さんプロフィール
たかぎ・かずこ/1964年生まれ。東京大学大学院博士課程修了、博士(文学)。東京大学大学院人文社会系研究科教授。平安時代の仮名文学、特に『源氏物語』が生まれるに到る文学史的な動態を探ること、そして『源氏物語』そのものの構造や表現を分析することを研究課題としている。『源氏物語の思考』(風間書房)で第五回紫式部学術賞受賞。著書に『源氏物語再考』(岩波書店)、『源氏物語を読む』(岩波新書)、『源氏物語入門』(岩波ジュニア新書)、『平安文学でわかる恋の法則』(ちくまプリマー新書)など。
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