2021年に刊行されてベストセラーとなった『読書大全 世界のビジネスリーダーが読んでいる経済・哲学・歴史・科学200冊』（日経BP）。このたび、著者である堀内勉さんの新著『人生を変える読書 人類三千年の叡智を力に変える』（Gakken）が刊行された。
『読書大全』が人類の歴史に残る名著を解説したブックガイドであるのに対し、『人生を変える読書』は読書の「『中身』に焦点を当てた深いものを書きたい」との思いから生まれた、"本当の読み方"を教えてくれる1冊だ。
本書は、速読術や多読法などのテクニックを書いたものではない。堀内さんは読書の方法論にはほとんどこだわりがなく、途中から読み始めても途中でやめてもいいと考えているそうだ。
そんな堀内さんには、本の読み方の唯一のこだわりがある。それは、「『人間』に焦点を当てた読書」ということ。読書をする際には、自分の人生と照らし合わせて読んでもらいたい、少しでも生きる糧として活かしてもらいたい、と書いている。
私が本書で訴えたかったのは、本と真摯に向き合うことであなたの人生の振り返りができ、これからの人生をどう生きるかについて考えるきっかけができるということです。そして、そのための材料が良書の中にはたくさん詰まっていますよ、ということです。
（「はじめに」より）
「どんな本を読めばよいですか？」
この質問をされるたびに、堀内さんはかなり当惑するそうだ。というのも、その人がどんな人で、どんな人生を歩み、どんな考えや価値観を身につけ、いまどんな気持ちで生きているのか、何を求めているのか、それをまったく知らないから。
究極、この質問の答えは自分にしかわからない。それなのになぜ、多くの人が問うてくるのか。その理由を考えたところ、次のような姿勢が世の中に広く蔓延していることの表れなのでは、と思い至ったという。
「自分が何をしたいのかがわからない」
「自分が何をするべきなのかを、誰かに教えてもらいたい」
「自分が何を好きなのかがわからない」
「自分が何を好きであるべきなのかを、誰かに教えてもらいたい」
堀内さんが教鞭を執っている多摩大学大学院のビジネススクールでは、2023年から「読書演習」というゼミ形式のクラスを始めた。受講生は、自分に大きな影響を与えた本を持ち寄り、なぜその本が自分にとって特別なものなのかを議論する。
その際、ただの要約や感想や質問ではなく、自分の生き方とその本を照らし合わせ、自分にとって「どんなことが起こってもこれだけは本当だと思うこと」とは何か、考えてもらうようにしているという。
読書を通じてあなたがあなた自身についての理解を深めることは、あなたの人間全体についての理解が深まることでもあります。そしてそれは、あなたの生き方や他者との交わり方に大きな影響を与えることになるはずです。
（「おわりに」より）
"本当の読み方"を知ると、読書欲がもっと湧いてくる。つい文字を追ってアウトラインをなぞるような読み方をしがちだが、「本」と「自分」を結びつけて、本書にあるような「自分を形づくる」読書、「心の体幹を鍛える」読書をしたいもの。「人生を変える○○」というコピーを見かけるたびに、そんな簡単に変わるのかとツッコミを入れたくなるが、読書には人生を変える力が本当にあると思う。
■目次
はじめに
序章 自分を形づくる読書――人格をつくりあげるのはあなた自身である
第1章 人生を変える読書――あなたはまだ本当の読書を知らない
第2章 生きるための読書――不確実な人生を生き抜く力を手に入れる
第3章 好きから始める読書――読書至上主義という思い込みを捨てる
第4章 対話としての読書――既成概念の「枠組み」の外に出るために
おわりに
参考文献
■堀内勉さんプロフィール
ほりうち・つとむ／多摩大学大学院経営情報学研究科教授、多摩大学社会的投資研究所所長、一般社団法人100年企業戦略研究所所長。東京大学法学部卒業、ハーバード大学法律大学院修士課程修了、東京大学 Executive Management Program（東大EMP）修了。日本興業銀行（現みずほ銀行）、ゴールドマンサックス証券、森ビル・インベストメントマネジメント社長、森ビル取締役専務執行役員兼最高財務責任者（CFO）、アクアイグニス取締役会長等を歴任。現在は、社会変革推進財団評議員、川村文化芸術振興財団理事、アジアソサエティ・ジャパンセンター理事兼アート委員会共同委員長、田村学園理事・評議員、麻布学園評議員、ボルテックス取締役会長、経済同友会幹事、書評サイトHONZ レビュアーなどを務める傍ら、資本主義の研究をライフワークとして、多様な分野の学者やビジネスマンと「資本主義研究会」を主催している。著書に『読書大全 世界のビジネスリーダーが読んでいる経済・哲学・歴史・科学200冊』（日経BP）、『コーポレートファイナンス実践講座』（中央経済社）、『ファイナンスの哲学』（ダイヤモンド社）、『資本主義はどこに向かうのか』（編著、日本評論社）などがある。
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