福岡県北九州市にある「小倉昭和館」は、1939年に開館した県内最古の映画館だ。2022年8月10日、火災で建物が全焼したが、奇跡の復活を果たし、2023年12月19日にグランドオープンした。
11月22日に発売された、三代目館主・樋口智巳さんの著書『映画館を再生します。 小倉昭和館、火災から復活までの477日』(文藝春秋)で、再建までの軌跡をたどることができる。
小倉昭和館のある旦過(たんが)市場は、2022年、二度の火災に見舞われた。4月の火災では、昭和館は被害をまぬがれたものの、8月の火災で全焼。83年の歴史ある建物とともに、映写機も、フィルムも、たくさんの俳優のサイン色紙も、光石研さんが寄贈したばかりだった特設シートも、宝物だった高倉健さんからの手紙もなくなってしまった。
営業終了後だったため客はおらず、けが人は出なかったものの、樋口さんは「うちはもうダメ」と絶望し、館主として運命をともにしたかったとすら思ったそう。しかしその後、リリー・フランキーさん、光石研さん、仲代達矢さん、秋吉久美子さん、片桐はいりさん、笑福亭鶴瓶さんなどたくさんの映画人に支えられ、さらに再建を求める1万7152筆もの署名を受けて、再生を目指していく。
グランドオープン1本目に選んだのは、1989年の名作イタリア映画『ニュー・シネマ・パラダイス』。ストーリーの中では、舞台となる映画館が全焼したのちに再建され、まさに小倉昭和館の運命と重なる。
「まちの人たちのよろこぶ顔を見たい。みんなの居場所を守りたい」......そんな樋口さんの思いと、映画を愛する人々の思いが胸を打つ一冊。
【目次】
第1章 昭和館がなくなった。
うちはもうダメ/まあ、しょうがないやろ/リリーさんが助けてくれた/高倉健さんの手紙/支えてくださる人たち/みんなの「場」がなくなった
第2章 暗闇の力を信じたい。
たったひとつの希望/光石さんのやさしさ/北九州で一番不幸な女/再建案が出てきた/東京で、自由を感じる/理想の映画館って、なんだろう/わたしは社長になるの?/中村哲さんは郷土の誇り/クリスマスの思い出
第3章 わたしたちの居場所。
映画館はどうあるべきか/鶴瓶さんがやってきた!/出会いと別れ/目標は、三千万円/ここが故郷の場所/若い人たちに浸透していない/多事多難の日々/これが遺言なの?/どん底も、悪くなかった
ちょっと長いあとがき
■樋口智巳さんプロフィール
ひぐち・ともみ/1960年、福岡県北九州市小倉出身。小倉昭和館の三代目館主。
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