2023年12月22日、佐藤眞一さんの著書『認知症心理学の専門家が教える 認知症の人にラクに伝わる言いかえフレーズ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)が発売された。執筆協力は介護ジャーナリストの島影真奈美さん。
本書は、認知症研究の第一人者である著者が、40年間にわたる認知実験、本人・家族・介護職員への調査、事例検討を続けてきた結果をもとに執筆した言いかえフレーズ集。長年にわたる研究の中で編み出された、認知症の人に伝わりやすい言葉かけが、○×形式で紹介されている。
認知症の人と話していると、自分の言葉が相手に伝わらず、「何度も言っているでしょ?!」「約束したんだからちゃんとやって!」と、何度も同じことを繰り返してストレスが大きくなりがち。そんなときに必要なのは、「認知症の人に伝わりやすい言葉がけ」でコミュニケーションをラクにすることだという。
また、言いかえフレーズだけでなく、認知症の種類や症状などの基礎知識や、介護をする家族のよくあるお悩みに対するQ&A、介護保険サービスなどのお役立ち情報も紹介。認知症の人の心を理解するために必要な知識が、図を交えながらわかりやすくまとめられている。
さらに、第3章「家族の悩みQ&A」では、介護をする家族から著者がよく質問される内容をQ&Aの形で紹介。家族が感じるイライラ、そのことへの罪悪感といった感情面から、施設に入所してほしいことの伝え方、詐欺や訪問販売の防ぎ方、運転免許を返納してもらう方法、貴重品の場所の聞き出し方などについて、なるべく認知症患者本人に寄り添う形で回答している。
認知症の人を介護していて、コミュニケーションに困っている人はもちろん、年末年始など久しぶりに親に会ったときに「あれ...?認知症かも?」と感じて、認知症について調べ始めたばかりでも活用できる1冊だ。
【目次】
はじめに
第1章 認知症の人の心を理解する
記憶は忘れても感情ははっきり残る/そもそも、認知症ってなに?/図解でわかる 認知症の4つの種類/生活習慣を見直して、認知症リスクを下げる/あの言動の「なぜ?」がわかる 認知症の症状/コラム1「残る仕事の記憶」
第2章 スッと伝わる言いかえフレーズ
●疑い
CASE01 同じことを何度も質問する/CASE02 処方されている薬を飲まない/CASE03 過去の苦労話を繰り返す 他
●軽度
CASE08 同じものを何度も買ってくる/CASE09 暑い日に厚着をする/CASE10 トイレを手伝わせてくれない 他
●中等度
CASE17 薬を何度も飲もうとする/CASE18 デイサービスに行きたがらない/CASE19 お風呂に入らない 他
●重度
CASE29 食べられないものを口に入れる/CASE30 家族のことがわからなくなる/CASE31 介護者にセクハラする
第3章 家族の悩みQandA
Q1 認知症の親にイライラしてしまう/Q2 「いい加減にして!」「ふざけないで!」と強い言葉で否定してしまった/Q3 介護施設に入所してほしいと伝えたい 他
コラム2「夕方に出て行ってしまうのは......」
第4章 お役立ち情報
おわりに
■佐藤眞一さんプロフィール
さとう・しんいち/1956年東京生まれ。大阪大学名誉教授。大阪府社会福祉事業団体特別顧問。博士(医学)。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学後、1999年に埼玉医科大学より博士号授与。明治学院大学心理学部教授、マックスプランク研究所上級客員研究員などを経て、2009年に大阪大学教授に就任し、2022年に定年退職。著者・共著は『認知症の人の心の中はどうなっているのか?』(光文社新書)、『マンガ 認知症』(ちくま新書)、『認知症plusコミュニケーション 怒らない・否定しない・共感する』(日本看護協会出版会)、『心理学で支える認知症の理論と臨床実践』(誠信書房)など多数。
■島影真奈美さんプロフィール
しまかげ・まなみ/1973年宮城県仙台市生まれ。介護ジャーナリスト。一般社団法人マリーゴールド理事。NPO法人タダカヨ理事。桜美林大学大学院老年学研究科に社会人入学した矢先に、夫の両親の認知症が立て続けに発覚する。認知症介護の実体験をもとに、新聞や雑誌、ウェブメディアなどで執筆をおこなう。著書に『子育てとばして介護かよ』(KADOKAWA)、『親の介護がツラクなる前に知ってきたいこと』(WAVE出版)がある。
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