こわばった顔で頑張りすぎてしまう毎日に、ふふっと笑えて肩の力が抜ける小説はいかが? 「笑い」をテーマに、あなたの日々に寄り添う3作品をご紹介。
早見和真『店長がバカすぎて』(角川春樹事務所)
1作目は、早見和真さんの『店長がバカすぎて』(角川春樹事務所)。これは、タイトルを見ただけでふふっと笑ってしまうのでは。物語の舞台は吉祥寺の中規模書店。薄給の契約社員・谷原京子28歳と、京子たちスタッフを振り回す「バカすぎる」店長の、ドタバタお仕事小説だ。
スタッフに「バカすぎる」とまで言われる店長・山本猛。品出しで超多忙な朝に、悠長に中身のない朝礼をおこなう。それも、数年前に流行ったベタな自己啓発本にハマったがゆえ。書店の店長にふさわしくない態度、軽薄そうな笑い顔、人を苛立たせる態度。なのに、なぜだか憎めない。京子は店長に振り回されながら、辞めてやる! と思いつつも、店長を一人にできず踏みとどまってしまう。
店長の絶妙なキャラクターと京子のツッコミに、思わず笑いが漏れる本作。同時に、超多忙な書店員のリアルが描かれている。全国の書店員から大絶賛され、2020年本屋大賞にノミネートされたヒット作だ。
つぶやきシロー『私はいったい、何と闘っているのか』(小学館)
2作目は、つぶやきシローさんの『私はいったい、何と闘っているのか』(小学館)。芸人であるシローさんの、「じわじわくる」文体が光る作品。2021年12月には、安田顕さん主演の映画が公開された。
主人公はスーパーで主任として働く伊澤春男、二女の父。あわよくば店長になりたい気持ちを隠しながら「店長になりたくて仕事をしているわけじゃない」と言ったり、娘が連れてくる恋人に虚勢を張ろうとしてみたり。期待してはつんのめってずっこけて、毎回最後はビッグマックのCMよろしく定食屋のカツカレーを食べる、情けない男の日常劇。
きっと春男が闘っている相手は、自意識というやつだろう。春男の日々はなんだかずっとうまくいかないのだが、その姿がじわじわ面白い。
風カオル『名前だけでもおぼえてください』(小学館)
3作目は、風カオルさんの『名前だけでもおぼえてください』(小学館)。主人公は売れないお笑い芸人の横山保美、32歳。お笑いを描いた小説のなかでも本作が異色なのは、相方が75歳のお爺ちゃんだということだ。
もともとコンビを組んでいた相方が結婚し、バイトもクビになった保美は、お笑いにも人生にも行き詰まりを感じていた。そんなとき、賞レースで優勝した芸人の先輩から、ヘルパーのアルバイトを引き継いでほしいと賢造爺さんを紹介される。これが保美にとって運命の出会いだった。ある日保美が営業先に賢造を連れて行くと、賢造は客席から保美の漫才に合いの手を入れ、会場は爆笑の渦に。可能性を感じたマネージャーが2人をコンビとして売り出すと、見事大当たり、たちまちお茶の間の人気者となった。
しかし数年後、賢造の認知能力が限界を迎えはじめる。笑い、そして涙のハートフル芸人小説。ぜひ、著者・風カオルさんの名前だけでもおぼえてください。
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