読み聞かせボランティア歴17年のミモザさんがおすすめの絵本を紹介するシリーズ「ミモザの読み聞かせ絵本」第9回のテーマは、「自分だけの空間」です。
あなたも子どもの頃、秘密基地をつくって遊んだことがあるのではないでしょうか。子どもは、「自分だけの空間」をつくるのが大好き。自分にぴったりの空間をつくりたい子どもたちを描いた絵本をご紹介します。
『わたしのおうち』
神沢利子 作、山脇百合子 絵/あかね書房
段ボールの箱で、わたしのおうちをつくるの。
いいおうちですねって、誰かが来るかもしれない。
うさぎの子とババ抜きをしたり、きつねの子とお茶したり。
先日亡くなった『ぐりとぐら』の山脇百合子さんが絵を手がけています。
段ボール箱から空想が広がって、野原に立つすてきなおうちに。
子どもの「ごっこ遊び」の空想の世界を、あざやかに描いています。
弟はおうちに落書きしてしまったので、一度は追い出しますが......。
『おおきな きが ほしい』
佐藤さとる 作、村上勉 絵/偕成社
「おおきなおおきな木があるといいな。ねえお母さん」
かおるの家の庭には、小さな木しかありません。
かおるがほしいのは、手をまわしたって抱えられないような太くておおきな木。
はしごをかけて上へとのぼると、枝が三つに分かれたところに小屋があって......。
わくわくする「空間づくり」の絵本。
かおるの話を聞いて、子どもの頃の木のぼりを思い出すお母さんと、同じような空想をしていたと語るお父さんがすてきです。
いつの時代も、いくつになっても、人はなぜこんなにも「おおきな木」にわくわくするのでしょう。
『あな』
谷川俊太郎 作、和田誠 絵/福音館書店
日曜日の朝、何もすることがなかったので、ひろしはあなを掘りはじめた。
お母さんや妹のゆきこ、となりのしゅうじくんやお父さんがやってきても、ひろしはひたすらあなを掘りつづけた。
あなの中に座り込んで、ひろしはこう思った。
「これはぼくのあなだ」
何の変哲もない、ただのあな。でもそれが、ひろしにはぴったりくるのです。
あなを覗き込んだお父さんとの、「なかなかいいあなができたな」「まあね」というやりとりがぐっときます。
なぜ子どもは、秘密基地などの「自分だけの空間」をつくるのが大好きなのでしょうか?
認知科学を研究している明治大学教授の石川幹人さんは、「『秘密基地ごっこ』は襲ってくる敵から隠れてやり過ごす練習」だと説明しています(AERA dot.「「秘密基地ごっこ」が好きな子どもが多い理由 <子どもの素朴な疑問に学者が本気で答えます>」より)。危険に備える遺伝情報が発動して、「自分だけの空間」に隠れて安心するのです。
ミモザさんは、「お話の世界も同じなのではないでしょうか」と言います。
「お話の世界は安全地帯です。物語が好きな子どもは、心の中に秘密基地を持っているんです。
学校で居場所のない子どもたちによく『図書室へおいで』と呼びかけられていますが、『安全なお話の世界に逃げ込んでおいで』という意味があるのではないのでしょうか。」
段ボールの中、木の上、あなの中、絵本の中。子どもが安心できる「自分だけの空間」を、自由につくらせてあげて、見守っていたいものです。
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