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既婚男性の2人に1人、既婚女性の4人に1人が不倫。驚きの研究データ。

不倫

 不倫をテーマにしたマンガや小説は数えきれないが、日本では客観的な研究がほとんどなかった。本書『不倫』(中公新書)は社会学者と経済学者が大規模な調査を行い、不倫の実態に迫ったものだ。経験者は何%か。どんな人が不倫しやすいのか。どこで出会い、いかに終わるのか。家族にどんな影響があるのか。驚きの研究データが明らかになった。

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 まず、リアルな数字を示そう。既婚男性の51.9%、既婚女性の24.7%に「不倫経験あり」という結果が出た。予想以上の多さに驚いた。信頼できるデータなのか? 調査の手法はどうなのか? 誰が分析したのか? 本論に入る前に、調査手法について説明しよう。

ネット調査で真実のデータに迫った

 著者の1人、五十嵐彰さんは大阪大学大学院人間科学研究科准教授。もう1人の迫田さやかさんは同志社大学大学院経済学研究科准教授。体験ベースの知識ではなく、学問の対象として不倫を扱い、データをもとに不倫の実態を明らかにすることで、不倫との向き合い方や対処法を考えるきっかけにしたい、としている。

 2020年3月に、インターネット調査を行い、6651人のサンプルを収集した。これによると、既婚男性の46.7%、既婚女性の15.1%に不倫経験があることが分かった。

 しかし、不倫の経験を正直に答えることには抵抗が予想されるため、インターネットを通じて「リスト実験」という手法でさらにデータを集めた。冒頭で紹介した、既婚男性の51.9%、既婚女性の24.7%に「不倫経験あり」というのは、この数字である。

 著者は、「これまで日本でなされた調査のうち最も現実に近いものではないか」と自己評価している。

 本書の構成は以下の通り。

 第1章 不倫とは何か
 第2章 どれくらいの人がしているのか
 第3章 誰がしているのか--機会・価値観・夫婦関係
 第4章 誰と、しているのか--同類婚と社会的交換理論
 第5章 なぜ終わるのか、なぜ終わらないのか
 第6章 誰が誰を非難するのか--第三者罰と期待違反

 気になるデータをいくつか紹介しよう。まず、どのような人が不倫をしているか。分析の結果、女性は、専業主婦かどうかは不倫とは関係がなく、他方で自由になる時間が多ければより不倫をしやすくなることが分かった。

 また、男性は職場の女性割合が増えればそれだけ不倫をしやすくなることが分かった。「男性は不倫相手にあまり多くを求めないため、職場の女性の割合が増えればそれだけ潜在的な不倫相手を見つけやすくなるのだろう」と見ている。

 夫婦関係は不倫に影響するのだろうか? 分析から、女性は、配偶者の人格に対する満足度が低ければより不倫をしやすい結果となった。他方で男性にとって、配偶者の人格に対する満足度は不倫のしやすさとは関係がなく、かわりに配偶者とのセックスに不満を持っている人は不倫をしやすいという結果になった。

 ほかの要因は不倫に影響するのだろうか? 年齢、学歴とも関係がなかった。男性のみ、結婚前の交際人数が多いほど、結婚後に不倫をしやすいことが分かった。多くの場合、男性が誘う側であり、「交際人数が多ければそれだけ不倫へ相手を誘うスキルが高くなっているからでは」と分析している。

インターネットやアプリでの出会いが多い

 不倫相手との出会い方では、男女ともにインターネットやアプリを通して会う人が最も多く、既婚男性では全体の約22%、既婚女性は約19%を占めた。これ以外の出会い方は男女で傾向が異なった。

 既婚女性は、友人・知人の紹介、元交際相手、職場、趣味や習い事の場とまんべんなく広がっている。一方、既婚男性は職場での出会いが比較的多く、取引先といった職場以外の仕事関係も多い。また、町中や旅先での出会いが約9%というのが女性とは異なる。

 不倫相手の婚姻状況を見ると、既婚男性と既婚女性との、いわゆる「ダブル不倫」が5割近くにのぼる。既婚男性と未婚女性という組み合わせも同様に多く、4割を超える。既婚女性と未婚男性の組み合わせは最も少なく、6%程度だ。

 双方が既婚者であるダブル不倫の場合、発覚するリスクは高まるし、双方の配偶者から慰謝料が請求されやすく、最もリスクが高いのに、なぜ多いのか。

 本書は、既婚者という同様の境遇にあるために、共有できる事柄が多く、仲良くなりやすいなどの仮説を立てている。

 不倫相手とどれくらい続き、終わるのか? セックスの年間の平均回数は32.52回だが、中央値は年12回なので、月1度くらいが一般的なペースだと見ている。

 また、継続年数は平均4.12年だが、中央値は2.08年であり、不倫関係のおよそ半分は、2年以内に終わっているという。

 本書はデータの分析や解釈にとどまらず、社会学の家族論や社会的交換理論、経済学のサーチ理論、不確実性など、さまざまな理論にも触れて、不倫を考察している。

 石川弘義らによる『日本人の性』(1984年)や「プレジデント」誌による調査(2009年)、相模ゴムによる調査(2013年)といった先行調査にも触れている。大まかにいえば、男性は20~35%前後、女性は4~14%前後に不倫経験があるというものだ。本書では時代の変化や傾向まで論じてはいないが、ネットが最も不倫相手との出会いの場になっているデータから、ネット社会が不倫を促進していると言えるのではないだろうか。

 スキャンダルなテーマを扱い、本にまとめた著者の勇気に敬意を表したい。「既婚男性の2人に1人、既婚女性の4人に1人が不倫をしている」というデータは、今後あらゆるところで引用されることだろう。



 


  • 書名 不倫
  • サブタイトル実証分析が示す全貌
  • 監修・編集・著者名五十嵐彰、迫田さやか 著
  • 出版社名中央公論新社
  • 出版年月日2023年1月25日
  • 定価902円(税込)
  • 判型・ページ数新書判・223ページ
  • ISBN9784121027375

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