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清少納言だけが嫌いだった? 紫式部の同僚評

図解でスッと頭に入る紫式部と源氏物語

 2024年大河ドラマの主役となる紫式部が、同時代を生きた先輩作家・清少納言に対して、日記に罵倒の限りを尽くしていたことは広く知られている。たとえば、得意顔で知識をひけらかしている。利口ぶっているが学識の程度は足りない。「上っ面だけの噓」になった人の成れの果て......などなど。

 しかし、これはどの程度「異常」なことだったのか。もし他の同僚にも罵詈雑言を書き連ねていたなら、必ずしも清少納言だけを特別に敵視していたことにはならないはずだ。そこで今回は、2023年7月31日に発売される「スッと頭に入る歴史」シリーズの最新刊『図解でスッと頭に入る紫式部と源氏物語』(昭文社)から、紫式部による同僚の評価について紹介しよう。

同僚の容姿はべた褒め

 まず、友達が少ない紫式部の一番の親友だったという小少将の君(こしょうしょうのきみ)については、「悪口を言われたらそのままふさぎこんでしまいそう」とその打たれ弱い性格に言及しながら「上品で優雅で、春の二月のしだれ柳のような風情をもつ」とその容姿を詩的に褒めたたえている。

 また、他の同僚たちに対しても「整った容姿と賢そうな顔立ち」、「口元に高貴さと艶っぽさを同居させている」、「お嬢様風の雰囲気を醸し出している」、「非の打ち所がない外見をしている」と、その容姿をべた褒めしている。本当に美女揃いだったのか、仲のよさゆえのお世辞なのかは分からないが、とにかく関係は悪くなさそうだ。

 一方、文学者としての才能をもつライバルたちに対しては、容姿ではなく文学的能力に対する冷静な批評を展開している。歌人として有名だった和泉式部には「格調高い歌をお詠みになりますが、ちょっとした機会にお詠みになった歌こそ素晴らしい」、同じく和歌の名人だった赤染衛門には「歌は見事ですが、そこまで頭でわかってはいらっしゃらないと思われます」と少しひねくれた賞賛を送っている。

 このほか、紫式部は上司である中宮・彰子のことを深く尊敬していたことでも知られている。上司やライバルには敬意を払い、同僚には甘々な評価を下す。やはり紫式部の清少納言に対する敵意は特別なものだったようだ。もしかすると、二人の間には歴史には残らない何かがあったのかも――。来年の大河ドラマに向けて、そんな妄想を膨らませられる1冊だ。

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【本書の構成】
|| 第1部 紫式部とその時代
紫式部の時代を俯瞰する
第1章 平安時代の後宮生活
第2章 紫式部の生涯
|| 第2部 『源氏物語』を知る
第3章 光源氏の青年時代――恋の旅路を歩む貴公子
第4章 栄華の頂点――位人臣を極めた光源氏
第5章 宇治十帖――光源氏亡き後の世界
|| 紫式部を巡る人々
 藤原道長、藤原定子、藤原彰子、藤原為時、藤原宣孝、清少納言、和泉式部、赤染衛門、一条天皇

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<代表誌面>
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<平安時代を知るための Keyword 1「藤原氏」>
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<平安時代を知るための Keyword 4「国風文化」>
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<イラスト図解 「紫式部と宮中の人々」>
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<第3章 光源氏の青年時代 「破滅への道」>
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<第4章 栄華の頂点 「光源氏の教育」>

■竹内正彦さんプロフィール
たけうち・まさひこ/國學院大學文学部日本文学科教授。1963年長野県生まれ。國學院大學大学院博士課程後期単位取得後退学。博士(文学)。群馬県立女子大学文学部講師・准教授、フェリス女学院大学文学部教授等を経て、現職。専攻は『源氏物語』を中心とした平安朝文学。著書に『源氏物語の顕現』(武蔵野書院)、『源氏物語発生史論―明石一族物語の地平―』(新典社)、『2時間でおさらいできる源氏物語(だいわ文庫)』(大和書房)、『源氏物語事典』(大和書房、共編著)、監修に『図説 あらすじと地図で面白いほどわかる!源氏物語(青春新書インテリジェンス)』(青春出版社)など。


※画像提供:昭文社

  • 書名 図解でスッと頭に入る紫式部と源氏物語
  • 監修・編集・著者名昭文社 出版 編集部 (編集)、竹内正彦 (監修)
  • 出版社名昭文社
  • 出版年月日2023年7月31日
  • 定価1,540円(税込)
  • 判型・ページ数A5判・128ページ
  • ISBN9784398144720

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