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患者の9割が5年で死亡...「死に至る病」膵臓がんから身を守る方法

膵臓がんの何が怖いのか

 2023年7月26日、東京女子医科大学教授・本田五郎さんの新著『膵臓がんの何が怖いのか 早期発見から診断、最新治療まで』(幻冬舎)が発売される。膵臓がんのエキスパートである著者が、黄疸や背部痛ほか特徴的な初期症状から、検査法、化学療法、ロボット手術などの最先端の治療法までをわかりやすく解説している。今回はその中から、膵臓がんの初期発見の難しさについて説明しよう。

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5年生存率はわずか8.5%

 本田さんによると、膵臓がんは他のがんと比べても非常に凶悪な病だという。たとえば、がんと診断された人がそれから5年後に生存している割合を表わした「5年生存率」を見ると、乳がんや前立腺がんなどが90%を超えているのに対し、膵臓がんのそれはわずか8.5%しかない。これは多くのがんの中でも突出して少ないパーセンテージで、膵臓がんと診断された人の9割が5年以内に死亡していることになる。膵臓がんは、通常のがんの恐ろしさとは比べ物にならない「死に至る病」なのだ。

 なぜここまで生存率が低いのか。実は、強力な消化液を分泌する膵臓の手術は、他のがん手術と比べても圧倒的に難しく、ステージ(がんの進行度)が進むと手術ができないケースが少なくないという。しかも、ステージ1か2といった初期の段階で手術に成功しても、他の部分へ転移している確率が非常に高く、根治するのは難しい。そのため、まだ「がん」になる前の「ステージ0」のうちに見つけて手術で取っておくのがいいとされる。

症状がないうちの切除も

「ステージ0」の膵臓がんは「上皮内がん」と呼ばれる。これは、がん細胞が膵管上皮内に留まっている超早期段階のがんを指す言葉で、この段階で膵臓を切除すれば、90%を超える治癒率で根治が期待できるという。

 ところが、「上皮内がん」はまだ「がん」になる前の段階なので、目立った症状がなく、結果的にはがんにならない可能性もある。つまり、この段階での切除は、健康体の人が「膵臓がんになりそうだから、がんになる前に膵臓を取ってしまう」という見切り発車の形でしか行えないものなのだ。

 膵臓の手術は命に関わるリスクが高い。また、膵臓がなくなるとインスリンや消化酵素剤が一生欠かせなくなってしまう。このため、手術を提案された患者の多くは「私、こんなに元気なのに、本当に手術が必要なんでしょうか」「何の症状もないのに、手術で膵臓を取らなきゃならないのでしょうか」と戸惑うという。

 もし、この段階になっても膵臓を温存したい場合は、こまめな定期検査が必要となるが、一般的な健康診断や人間ドックでは、膵臓がんを見つけることは難しいという。本書では、「膵臓がんドック」など、膵臓がんを発見するための専門的な検査が詳しく紹介されている。


■本田五郎さんプロフィール
ほんだ・ごろう/1967年生まれ。県立熊本高校、熊本大学医学部を卒業後、京都大学医学部附属病院外科(研修医)、市立宇和島病院外科、京都大学消化器外科、済生会熊本病院外科、社会保険小倉記念病院外科、東京都立駒込病院外科、誠馨会新東京病院消化器外科などを経て、2020年10月、東京女子医科大学消化器・一般外科准教授に着任。2021年7月より同教授に就任。肝臓・膵臓の手術件数は2500件を超え、肝胆膵疾患の腹腔鏡下手術における高い技術力は世界的に知られており、海外での手術経験も豊富。


※画像提供:幻冬舎

 
  • 書名 膵臓がんの何が怖いのか
  • サブタイトル早期発見から診断、最新治療まで
  • 監修・編集・著者名本田 五郎 著
  • 出版社名幻冬舎
  • 出版年月日2023年7月26日
  • 定価1,034 円 (税込)
  • 判型・ページ数新書判・232ページ
  • ISBN9784344987036

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