パワハラ上司、しんどい人間関係、ブラックな職場、キツすぎる仕事。「もうダメ...」となる前に、知っておきたいストレスマネジメント術がある。
ストレスマネジメント専門家、公認心理師の舟木彩乃さんによる『「なんとかなる」と思えるレッスン 首尾一貫感覚で心に余裕をつくる』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、ストレス社会を生きる現代人が心の健やかさを保つための必須スキル「首尾一貫感覚」を解説した1冊。
「首尾一貫感覚」とは何か。これは「ストレスが高い状況にあっても、それにうまく対処して、心の健やかさを保てる力」のことで、「ストレス対処力」とも呼ばれている。
「首尾一貫感覚とは、シンプルにいうと、『大変な仕事、しんどい人間関係、ストレスフルな出来事があっても、明るく健康に生きる力』なのです。」
1970年代、医療社会学者のアーロン・アントノフスキー博士は、「第2次世界大戦中にナチスドイツのユダヤ人強制収容所に収容された経験をもちつつも、その後も更年期を経てなお健康を保っていた女性たち」について研究し、その「考え方」や「価値観」を分析した。そこから導き出されたのが「首尾一貫感覚」。ストレス社会を生き抜くヒントとして、メンタルヘルスや公衆衛生の分野にとどまらず、近年は教育や看護の分野でも注目されているという。
「首尾一貫感覚」は3つの感覚で構成されている。
1 把握可能感(だいたいわかった)
自分の置かれている状況や今後の展開を把握できている、あるいは、ある程度予測できると思うこと。自分の身に起きていることは「おおよそ想定の範囲内」「だいたいわかった」と思える感覚。
~高めるために大切なもの~
みんながお互い理解している価値観や明文化されたルールに基づく人生経験、一貫性のある、統一性のある人生経験。
2 処理可能感(なんとかなる)
自分にふりかかるストレスや障害にも対処できると思うこと。自分のもつ「資源」(人間関係やお金、知力、権力)を活用することで「なんとかなる」と思うことのできる感覚。
~高めるために大切なもの~
小さすぎず大きすぎず、バランスのとれた適度な負荷のかかる人生経験。
3 有意味感(どんなことにも意味がある)
自分の人生や自分自身に起こることにはすべて意味があると思うこと。目の前に大きな困難があっても、「これを乗り越えたら、私は成長できる」と意味あるものととらえ、「どんなことにも意味がある」と感じられる感覚。
~高めるために大切なもの~
よい結果、望ましい結果が得られた出来事に自分自身も参加・参与したという人生経験。
本書は「第1章 ストレスにつぶされないために」「第2章 『だいたいわかった』把握可能感を高めるレッスン」「第3章 『なんとかなる』処理可能感を高めるレッスン」「第4章 『どんなことにも意味がある』有意味感を高めるレッスン」の構成。「自分がいる環境のルールや規則を知る」「似たような状況の人の本を読む」「自分の『存在意義』を感じられる職場で働く」......など、3つの感覚を高める方法を紹介している。
たとえば「把握可能感」の高め方の1つに、「将来の"なりたい自分"を具体的にイメージする」がある。「将来」と一口に言っても、「今いる組織内でのキャリアビジョンなら2~5年先」を、「職業人として何かを極めるなら5~10年先」をイメージすることをすすめている。
まず、今いる組織の中で"なりたい自分"を想定している場合。「○年後、私は△△の部署で□□をしている」というように、すでに実現したこととして完成形の文章にする。そのためにどんな経験を積んだらいいか、どんな人たちとつながっていったらいいか、さらに目標達成の「期限」と具体的な「方法」も書く。
次に、職業人として何かを極める中で"なりたい自分"を想定している場合。「必要な条件を100%とすると、現在のスキルは60%くらいだから、あと40%必要」というように、実現するための条件(スキル・人脈・時間・お金など)と、現在の自分はどれくらいもっているかのパーセンテージを図に書く。
すると未来の自分をある程度予測できるようになり、「だいたいわかった」感覚が高まるという。
「首尾一貫感覚」というものを、本書で初めて知った。個人的に新鮮だったのが、考え方ではなく感覚にフォーカスしているところ。それも「だいたいわかった」「なんとかなる」「どんなことにも意味がある」という、あぁ、こういう感覚ね、とわかりやすい言葉に置き換えて書かれているので、自然とやってみたくなる。ストレスはどうしたってなくならない。その対処法の1つとして、本書は一読の価値があるだろう。
■舟木彩乃さんプロフィール
ふなき・あやの/ストレスマネジメント専門家。公認心理師。株式会社メンタルシンクタンク(筑波大学発ベンチャー)副社長。一般企業の人事部で働きながらカウンセラーに転身、その後、病院(精神科・心療内科)などの勤務と並行して筑波大学大学院に入学し、2020年に博士課程を修了。博士論文の研究テーマは「国会議員秘書のストレスに関する研究」。これまで一般企業や中央官庁、自治体などのメンタルヘルス対策や研修に携わり、カウンセラーとしての相談人数は、のべ約1万人以上。ストレスフルな職業とされる議員秘書のストレスに関する研究で知った「首尾一貫感覚(別名:ストレス対処力)」に有用性を感じ、カウンセリングにとり入れている。Yahoo!ニュース エキスパート オーサ-として「職場の心理学」をテーマにした記事、コメントを発信中。著書に『「首尾一貫感覚」で心を強くする』(小学館)、近著に『過酷な環境でもなお「強い心」を保てた人たちに学ぶ「首尾一貫感覚」で逆境に強い自分をつくる方法 』(河出書房新社)がある。
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