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承継はしなくていい。個人の時代の「お墓」の形とは

高齢化が進む日本において、「終活」は一大マーケットになっている。
生前整理や相続の問題、そして葬式の形など、自分の人生の幕引きをどのようにすべきかを考える人が増え、それに関する情報も溢れている。

そんな「終活」の中で、あまり触れられないものが「お墓」だ。
お墓は家族以外にも、先祖代々付き合いのあるお寺や親族、伝統やしきたりが絡んでおり、分かりにくい世界。そのため、相続や葬式などと違って、あまり情報が出てこない。 さらに、人々の移動が活発になったため、代々受け継がれてきたお墓との関係が希薄になっていることもあり、お墓と新しい関係を作る必要があるのだ。

『令和時代のお墓入門』(幻冬舎刊)は寺院経営のコンサルティングを手掛ける樺山玄基氏が、これからの時代の私たちとお墓の新しい関係、そして新しい時代のお墓の形についてつづった一冊。「新しい時代のお墓の形」とは一体どういうものなのか。本書を見ていこう。

■「継ぐ」ことが前提のお墓だが、それが頭の痛い問題に...

実は民法では「財産」とされている「お墓」。そのため、承継することが前提となるわけだが、家族や地域のあり方が大きく変化している現代の日本では、お墓を承継することが頭の痛い問題になってしまっている。

樺山氏のもとには、このような相談が来ているそうだ。
「子どもは遠方に嫁いだ娘が一人。墓をつくっても継ぐ人がいない」
「子どもたちは戻って来る予定がなく、お墓の面倒をみてもらえそうにない」
「故郷の墓を継ぐ立場にあるが、上京して久しく、戻る予定もない」 「一人暮らし。死後、人に迷惑をかけたくない」

自分のお墓を建てても面倒を見てもらえない、継ぐ人がいない。こうした悩みに対して、新たなソリューションとなるのが本書で樺山氏が説明している「永代供養墓」だ。

■「永代供養墓」は「承継を前提としない」新しいお墓の形

永代供養墓とは、どんな墓のことを言うのか。永代は「永遠」の意味、そして「供養」は文字通り「供養する」ということ。つまり、永遠に供養するための墓である。では、誰が供養をするのか。永代供養墓の場合は、お寺だ。

子孫が自分のお墓と希薄になっても、お寺が代わりに供養をし続けてくれるのがこの永代供養墓。「承継を前提としない」という点で、子どもや子孫といった承継者の手を煩わすことはなくなる。
となると、一つ疑問が浮かぶ。永代供養ということは「合祀」ではないか――つまり、他人の遺骨とともに一緒に埋葬されるのではないかということだ。

樺山氏いわく、10年ほど前に永代供養墓ができはじめた頃は、この合祀タイプがほとんどであったという。しかし、今は利用者の多様なニーズに応えるため、永代供養墓のバリエーションは増えており、個別墓のタイプも登場しているという。
個別墓は、例えばお寺の敷地内に約30cm四方のお部屋を集めた一角を設け、そこに遺骨を骨壺の中に入れて安置するという形がある。これを樺山氏は「マンションタイプ」と呼んでいる。

■変化する社会の形に合わせてニーズが高まる永代供養墓

承継者問題以外にも、永代供養墓はお墓に対するハードルを下げる要素が多い。

例えば費用。従来のお墓の購入費用は200万円から300万円が相場だと言われている。さらに、その区画を買い取るわけではなく使う権利を買うということになるため、年間管理料がランニングコストとして発生する。一方、永代供養墓はそれに比べて費用を安く抑えられ、年間管理料も発生しないため、負担にもならない。

また、寺院側の視点で言えば、お墓の用地不足問題の解決の一手になると考えられる。都市部のお墓の需要が高まる中でも、寺院は勝手に墓地を広げることはできない。それは法律によって区域が定義されており、おいそれと墓地を開発することはできないためだ。そこで永代供養墓の出番が増えるというわけである。

 ◇

永代供養墓は「合祀」タイプ、「個別墓」タイプの他に、今注目を集めている「樹木葬」タイプもある。これは樹木を墓標とするもので、自然葬墓地ともいう。このように、お墓の形は多様化が進み、自分の理想に合わせて選べるようになってきているのだ。

本書ではこうした新しいお墓の形以外にも、お墓の歴史や寺院の役割について触れており、これまでのお墓の変遷からこれからのお墓まで学べる一冊になっている。終活の中でも地味な存在であるお墓だが、承継が絡むという点で考えなくてはいけないものの一つ。ぜひ本書を読みながら、自分や家族の墓について考えてみてほしい。

(新刊JP編集部)

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