どんなに有能な人であっても、一人でできることには限りがある。だからこそ、組織ではマネジメントが必要になる。
ただ、このマネジメントが難しい。部下やスタッフを共通の目標に向かわせるだけでも一筋縄ではいかない。仮にそれができたとしても、「本気度」には各人でばらつきがあるはずだ。「とりあえずチームの目標には向かうけど、言われたことをこなせばいい」というメンバーが何人いても、なかなかチームとしての推進力は出ない。
いかに「本気」を引き出すか、がマネジメントの腕の見せ所だ。
その方法として、広く知られているのが「ほめる」という手法。確かに、褒められて嫌な気持ちになる人は少なく、そうやって気分を乗せてあげれば、どんどん本気になって仕事に励む人もいるだろう。上司の方も部下のいい部分を意識的に探すようになる。一見「ほめること」はいいことづくめのように思える。
ただ、この「ほめる」について「麻薬みたいなもの」として、警鐘を鳴らしているのが『誰もが人を動かせる! あなたの人生を変えるリーダーシップ革命』(日経BP刊)の著者、森岡毅氏だ。
人は誰しも、他人に認められたいという欲求を持っている。ほめることでその欲求を刺激すれば、相手はさらにやる気を出すというのは本当だろう。それはデール・カーネギーが『人を動かす』でほめることの大切さを説いていたことにも表れている。
ほめることの短期的な効果は間違いない。ただ、だからこそほめることにはリスクが伴うのである。
やることなすこと褒めちぎり、褒めまくる頻度を高く継続していく先にあるのは、人に褒められないとモティベーションが湧かない人、つまり動機づけの源泉を他人に握られて自立できない人を作ることになります。(P158)
これが、森岡氏がほめることを「麻薬」だという所以だ。
上司にほめられれば、もっとほめられようと仕事に励む。これは、ほめられないとやる気が出なくなることの裏返しであるばかりか、ほめられないというだけでけなされたように感じたり、他人がほめられるのをやっかむことにつながりやすい。
上司に怒られることを恐れながら働くのは不幸な働き方だが、上司にほめられるために働くのも、実は突き詰めれば根は一緒。上司やリーダーにモチベーションを握られてしまっている、主体性なき部下たちを大量に作ってしまうことは、長い目で見れば組織にとってメリットが少なく、何より本当の意味で人を生かすことにならない。だからこそ、上司やリーダーは、思考停止的にほめつづけてはいけない。「さじ加減」と「タイミング」「ほめ方」が大事なのだ。
◇
では、上司やリーダーは部下を束ね、本気にさせるためにどんな接し方が求められるのか。
本書で明かされているのは、経営難に陥っていたUSJをV字回復させた森岡氏のマネジメントについての知見と経験であり、それらは今まさにリーダーとして仕事に取り組む人に大きな学びを与えてくれるはずだ。
(新刊JP編集部)
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