文部科学省の調査によると、2018年度に認知された小・中・高等学校及び特別支援学校におけるいじめの件数は54万件を超え、前年度から10万件以上増加した。小中学校の不登校の児童生徒の数は16万人を超え、前年度と比較しても2万人以上増えている。スポーツ振興センターの調査では、18年度に発生した、治療費などが必要な学校事故は99万件を超えている。
それだけではない。文科省の調査で、18年度に精神疾患により休職した公立学校の先生の数は5000人を超え、その7割は勤続年数3年未満の先生。16年度の公立小中学校の先生の1日あたりの平均学内勤務時間は11時間を超え、教師の労働環境は非常に悪いといわざるをえない。
これらの調査結果を見るだけでも、今の学校ではさまざまな問題が起こっていることがわかる。これらの問題を解決するために今注目されているのが、学校と関わる弁護士「スクールロイヤー」だ。
『学校弁護士 スクールロイヤーが見た教育現場』(神内聡著、KADOKAWA著)では、弁護士資格を持つ現役教師であり、スクールロイヤーとしても活躍している神内聡氏が、実体験とスクールロイヤーという弁護士の視点から、今の日本の教育が抱えるさまざまな問題とこれからの日本の教育の在り方について紹介する。
2018年頃に、学校現場で発生するさまざまな問題に対して、裁判になってからではなく、トラブルが予測されそうな段階から、学校の相談相手としての立場で「子どもの最善の利益」の観点から関わり、継続的に助言する弁護士として「スクールロイヤー」は登場した。神内氏によると、2020年8月時点で、全国で60を超える自治体でスクールロイヤーは導入されている。
新たな職域として期待されているスクールロイヤーには、一般的な弁護士とはまたちがった資質が求められる。その最大の要素は教育現場の実態を知ることだ。具体的には一方の当事者だけの代弁者という立場を離れ、今の教育現場の実情を理解すること。
神内氏はスクールロイヤーになる弁護士には、できれば週1回の学校勤務をしてほしいと述べる。それが、今の教育現場の実情を手取り早く、確実に理解するための最適な方法だからだ。子ども本人と直接会うことで、「子どもの最善の利益」を実現することにもつながるという。
日本で初めて弁護士資格を持った教師として学校現場で勤務するのと並行して、教育委員会や学校法人などの学校設置者のスクールロイヤーとしても活動している神内氏が経験したリアルな教育現場の問題を読むことができる1冊だ。
(T・N/新刊JP編集部)
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