連日のオリンピックでのアスリートたちの活躍から目が離せない。そして彼らが競技をやり切ったあとに語るコメントは、努力してきたこれまでの軌跡が凝縮されている。
前に進む意志。それは日々を生きる私たちにとっても必要だ。アスリートたちの言葉には、その意志が込められている。
『弱いメンタルに劇的に効く アスリートの言葉――スポーツメンタルコーチが教える"逆境"の乗り越え方』(鈴木颯人著、フォレスト出版刊)では、私たちのメンタルに効く数々のアスリートたちの言葉が紹介されている。
たとえば、新しい挑戦しようとしても不安でなかなか踏み出せないということはないだろうか。実はそれはアスリートも同じ。挑戦にはどんな人でも不安がつきまとう。
「ぼくは臆病です。つねに恐怖心を持って乗っている。」(武豊)
「僕は強い人間ではないのだと思う。」(上原浩治)
アスリートたちは自分の中にある弱さを認め、不安を無理して消そうとするよりも、うまく受け入れようとしているように思える。
不安は悪い感情だと思ってしまいがちだが、それがあるからこそ前に進めるのではないか。臆病、弱さ、そうしたものを克服するために努力をする。アスリートとは、不安を力に変えることができる人たちだとも、著者の鈴木氏は述べるのである。
良い結果が出たときはもちろん嬉しい。成功の余韻に浸り続けていたい気持ちも分かる。ただ、過去の成功に捉われたままでいると足元を掬われることがある。
「早く明日になって欲しい。こういう結果のときに余韻に浸ったりすると、この先はロクなことがないですから。」(イチロー)
これはイチローが5打数5安打という結果を残したときに言った言葉だ。過去の成功は確かに貴重だが、もうそれは過去の話。自分を見失わずに次の準備を始めなければいけない。
私たちも自分やチームが結果を出したときに、その成功にかまけてしまうことはないだろうか。そうなると、次の施策の準備が不足し、一転、失敗してしまう。
「勝った後のシーズンが何よりも難しい。」(本橋麻里)
長年にわたり活躍し続けるアスリートたちは、そのことをよく知っている。
勝ち続けるのは至難の業。だからこそ勝ち続けると自然に勝ったときのイメージを大切にしすぎてしまう。だが、過去の成功に捉われすぎてはいけないのだ。
◇
一歩前に進もうとするとき、必要なものは何か。結果より大切なものがあるとしたら、それは何か。それを本書に書かれたアスリートの言葉たちが教えてくれる。
挑戦しようとしている人たちの背中を押してくれる一冊である。
(新刊JP編集部)
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