「いけないこと」という共通認識はあっても、昔から今まで「不倫」は決してなくならないし、これからもおそらくなくなることはないだろう。
人はなぜ将来がない恋にハマってしまうのか?
『さよならジュード』(SAKURA著、幻冬舎刊)はそんな問いについて考えるヒントになるかもしれない。ここで描かれているのは、5年にもわたる不倫の一部始終である。
シングルマザーである主人公の「私」と不倫相手であったイギリス人国際弁護士の「ジュード」はどのように不倫の「沼」に落ちていったのか。著者のSAKURAさんにお話をうかがった。
――『さよならジュード』は良いところもつらいところも含めて不倫の恋愛のすべてを見せてくれる作品です。あまりにリアルで生々しかったのですが、これは本当に創作なのでしょうか?
SAKURA:いえ、実は実体験なんです。
――多少は創作が混じっていたりもするんですか?
SAKURA:それが創作の部分はなくて、全部実話です。既婚者の男性とお付き合いしていたのですが、その当時のメッセージのやりとりを本にしたようなものなので。
――LINEでのやり取りなども細かく書かれていますものね。
SAKURA:履歴を残していたから書けたというのはあります。膨大すぎてまとめるのが大変でした。
――Instagramのアカウントでも当時経験された不倫について書いていますね。どんな反応が来ますか?
SAKURA:見てくださっている方はほとんど女性なのですが、当時の私と同じように既婚者と不倫していて悩んでいる人とか、復讐を考えている人もいます。相談してくださったりもします。
――この本の内容が実話だとすると、不倫の深みの深みまで行っている印象ですから頼りになりそうです。
SAKURA:相談してくださる方の気持ちは痛いほど分かります。私も同じでした。なので 話を聞くたびに相手の男性に対して怒りも湧いてきます。良い事は言わず、私が思った事 をお伝えさせて頂いています。そしてただ「自分を大事にしてほしい」ということは伝えています。ボロボロになってまで我慢しないで、って。
――この作品の主人公である「私」も、既婚者であるジュードの身勝手さに何度も嫌気がさしているのに、それでも別れる選択ができずに、傷ついていきます。
SAKURA:最初言っていたことからズレて、5人目が生まれてからは、離婚して自分の方 に来てくれる可能性なんてもうほぼないと分かりました、それでも相手が甘い言葉をかけてきたので数パーセントの希望にすがってしまうことはありました。
――「不倫」という人間関係の始まりから終わりまでが徹底的に書かれています。この作品を通して伝えたかったことを教えていただきたいです。
SAKURA:自分のなかでは辛い経験だったのですが、衝撃的なこともありましたし、見る側としては、ハラハラ、ドキドキという感情で読んでもらえるのではないかと思って書きました。
またSNSを見ていると、いわゆる「サレ妻」みたいに、不倫されている側の情報発信は多いのですが「愛人側」の発信は少ないということもありました。たとえそれで嫌われることがあっても自分の体験を書いてみようかなと。
当時の私と同じような状況で悩んでいたり傷ついている人が、読んですっきりした気持ちになったり前向きになれたらいいなと思います。不倫の悩みはあまり人に相談できず、一人で抱えやすいので。
――ジュードさんが奥さんと別れてくれる可能性はないことは「私」もよくわかっていたはずです。それでも関係を持ち続けてしまう心理はどのようなものなのでしょうか。
SAKURA:途中から相手のことは信用できなくなっていたのは確かですが、それでもスパッと諦められないのは、やはり心の整理や相手の見極めがどこかでできていなかったのでしょうね。これまで誰もしてくれなかったことをしてくれたり、特別な思い出があったのも事実なので。
信用できる相手ではない。結婚するのも難しい。でも「このまま一生愛人でもいい」と思う瞬間もある。こういう気持ちの間で揺れていた気がします。
――最初は幸せだったのに、徐々に相手への不信感が募り、精神的に不安定になっていく流れに引き込まれました。奥さんのSNSを見るのをやめられなかったり...。
SAKURA:SNSを見るのはやめられなかったです...。毎日見てしまっていました。それをはじめたあたりから自分がおかしくなってしまったんですよね。
――二人のやりとりが実話だったとすると、ジュードは妻子ある身なのにむしろ積極的に恋愛をしようとしていてショックを受けました。こんなに簡単に不倫するんだ...と。
SAKURA:たしかにそうですね。子どもの活動を通して初めて会って、その後ばったり再 会して付き合い始めたのですが、その再会がなかったらどうなっていたのかなと思うこと はあります。男性の不倫をする瞬間とかきっかけってそんなに大きな事じゃないかもしれ ません。
――人間の「業」のようなものを強く感じました。主人公は、最初こそ「愛人でいい」と割り切っていたのに、いつの間にかジュードに執着するようになり、一方で自分だけが我慢する恋愛に傷ついていきます。書く時にどんなことを考えていましたか?
SAKURA:最初のデートの時は愛人で良いというか、あなたの家庭を壊す気はないとは言 いました。しかし、愛人以上になったのは早かったと思います。そして、その流れを当時自分が感じていた思いや気持ちを読者の方にも感じてもらえるように気をつけて書きました。
そしていつも「愛している」と言ってくる人がなぜこんなにひどいことをできるのか、どうしてこんなに精神的に不安定になるのか。結局最後は裏切られてしまうのですが、その時の気持ちもできるだけリアルに伝えられたらいいなと。
――「ずっと愛人でいい」と思わせることって可能なんでしょうか?
SAKURA:相手次第と、こちらが相手に対する愛情の度合いと相手との関係性でしょうね。たとえば私がジュードの他にも何人かと付き合っていて、ジュードの優先順位が一番じゃなかったとしたら、もしかしたらジュードも私も不倫という関係性をずっと楽しめたのかもしれません。私は私で他の人もいるし、ジュードも家庭があるしということで、「お互いのタイミングがいい時に会えればいいや」と。
あとは、相手(既婚者)への愛情の割り切りができると長続きしやすいのかもしれません。割り切りができず、私の愛情が高まっているだけだと愛情が執着や嫉妬に変わってしまう。執着や嫉妬ってもはや愛情じゃないですからね。
――終始主人公の側が我慢して、ジュードに振り回される恋愛でしたね。
SAKURA:そうですね。一方で、こっちに「愛している」といいつつ、家庭では幸せそうに過ごしているのも見えるんです。それを指摘すると「僕の気持ちなんてわからないくせに」と。そうなると「じゃあ別れてよ」という話になって。その繰り返しでした。
――主人公は最後にジュードにある報復します。話はそこで終わっていますがその後はどうなったのかがすごく気になります。
SAKURA:実はInstagramで続きを公開する予定です。「sayonala_jude」で検索すると読めると思います。
(後編につづく)
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