頭の良さや賢さには誰もが憧れるもの。
ただ、ひと口に「賢さ」といっても、論理的思考力や対人能力、段取り力など、その中身はさまざまだ。
なかでも、ヒトやモノが足りないなかでも有り合わせのものでどうにかしてしまったり、誰も考えつかないアイデアをひねり出したり、思いもよらない解決策を導き出したりする「発想力」は「賢さ」の大きな構成要素だろう。この発想力、生まれ持った才能によるところが大きいイメージがあるが、今からでも高めることはできるのだろうか。
運動は単なるスポーツではなく、脳をレベルアップさせる手段――
集中力や記憶力といった脳の機能をレベルアップさせる方法を脳科学の見地から解説する『最強脳 ―『スマホ脳』ハンセン先生の特別授業―』(新潮社刊)によると、自分の脳をパワーアップさせるための最大の秘訣は「運動」。もちろん、発想力についても同様である。
これまでも様々なところで運動が脳にもたらす好影響は語られてきたが、運動をすると脳に何が起こるのだろか?
発想力の話に戻ろう。
本書では発想力を「発散的思考(たくさんのアイデアを思いつくこと)」と「収束的思考(複数のアイデアの中から正しい答をひとつだけ見つけること)」の2つだとしている。どちらが欠けても創造的でしかも有用なアイデアは出てこない。
このうちの「発散的思考」が運動と深く関わっている。脳は一瞬ごとに自分の身の回りの情報を大量に集めているのだが、それら情報のうち、意識まで届くのはわずか。残りは脳の「視床」のはたらきによって捨てられてしまう。
この視床を正しく機能させるために必要なのが運動したあとに分泌されるドーパミンである。発想力豊かに考えたい時は、意識にいつもより少し余分に情報を送らなければならないが、多すぎると考えがまとまりにくいのだとか。ドーパミンが多すぎても少なすぎても、視床はちょうどいい量の情報を意識に伝えることができない。
運動をすることで脳全体に血液が多く流れている状態では、脳の働きはよくなることがわかっているが、問題はその効果は一時的なものなのだとか。加えて、運動をしすぎて体力を消耗してしまうと、運動している間もその後も発想力は鈍ってしまうという。
そのうえで、発想力を高めるために、本書ではこんな提言がなされている。
発想力を一番高めるには、まずは基礎体力をつけておくことです。それには定期的に運動をすることが必要です。何週間、何ヶ月とかかりますが、そうやってコンディションを良くしておいてから、がむしゃらになり過ぎないスピードで体を動かし(もしくは動かしておいてから)いつの日か人類を救うような発明をして下さい。(P81より)
◇
本書では運動がいかに脳の働きを活性化させるか、そしてどのような運動が効果的なのかを、記憶や発想など脳の機能ごとに解説していく。
自分の脳をいい状態に保ち、フル稼働させるために、脳の性質と特性について知ることは大いに役立つはず。仕事に、勉強に、創作活動に、役立てたい一冊である。
(新刊JP編集部)
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