会話の中で、この方はセンスがいいなと思う人との出会いがしばしばある。皆さんも、接する相手に対し、センスがいい人だと感じた経験が少なからずあるのではないだろうか。
実は、センスというのは、特別な人だけが持つ感覚というわけではないようだ。
本書『センスは知識からはじまる』(水野 学 著、朝日新聞出版)は、「くまモン」のアートディレクションや、NTTドコモのiDなどを手掛けた、日本を代表するクリエイティブディレクターの水野学さん(good design company 代表取締役)が、センスを磨き、仕事力を向上させるためのエッセンスをまとめた一冊。
水野さんは本書の冒頭で次のように記している。
センスとは、誰にでも備わった身体能力と同じです。
(中略)
センスのよさとはミステリアスなものでもないし、特別な人にだけ備わった才能でもありません。方法を知って、やるべきことをやり、必要な時間をかければ、誰にでも手に入るものです。
水野さんは、センスはみな等しく持っていて、それをどう育てるか、どう使うのかが重要だと説く。そして、本書のタイトルでもあるが「センスは知識からはじまる」という。
知識がない(しらない)ということは、そもそも、その仕事上は不利であること、そして、イノベーションとは知識と知識のかけあわせであることを挙げ、さらに、ヒットするものとは「あっと驚かないけれど、新しいもの」だという。つまりは、ありそうでなかったものだそうだ。ゆえに、豊富な知識を得ること、そして、掛け合わせることが大切だという。
なるほど、センスのよさは「やるべきことをやり、必要な時間をかければ、誰にでも手に入る」ということなのだ。
本書には、チョコレートの商品開発を例にした具体的なシミュレーションも掲載されていて理解を助けてくれる。水野さんが記す次のステップを踏めば、確かに、センスよさそうな仕事ができそうに思える。そのステップの抜粋は次のとおり。
(1)王道のチョコレートの知識を得る。
(2)流行のチョコレートを知る。
(3)いろいろなチョコレートの共通点を探し、なぜか?という疑問を見つける。
(4)疑問から仮説を導く。
(5)仮説を検証し、結論を出す。
このステップを踏むと、ある程度のレベルの仕事は整うそうだ。たしかに、知識がポイントになっている。しかし、現代で重要なのはこの先の領域だと水野さんはいう。その領域とは「精度」で、知識のクオリティが精度の高いアウトプットには欠かせないと説明している。
本書には、このようなシミュレーションのほかにも、「好き」を深堀りしてセンスを磨くことや、「せまいセンス」でもそれを軸に仕事ができること、人生の先輩と話してセンスの底上げをすることなど、「センスのいい仕事」に役立つエッセンスが豊富に紹介されている。
世界三大広告賞「One Show」でGold、「CLIO Awards」でSilverなどをはじめ、多数の受賞歴を持つ水野さんの思考方法なども読み取ることができるので、企画書を書く機会が多い方には、特におすすめの本といえるだろう。
当サイトご覧の皆様!
おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!
広告掲載をお考えの皆様!
BOOKウォッチで
「ホン」「モノ」「コト」の
PRしてみませんか?