「奇跡の公立小学校」と呼ばれた小学校がある。大阪市立大空小学校だ。
2006年に開校したこの公立小学校には、いじめを受けて学校に行けなくなった子、発達障害と診断された子、支援の必要な子が多く転校してきた。初代校長として木村泰子氏が務めた9年間、不登校ゼロ、モンスターペアレントもゼロ。さらに、学力の面でも、全国学力調査で全国一の県を上回ったこともある。この大空小学校の取り組みを描いたドキュメンタリー映画『みんなの学校』は大きな話題を呼び、文部科学省特別選定作品に選ばれた。
ただ、この大空小学校はどのようにしてこのような実績を残すことができたのか。それは、点数で測れる「見える学力」ばかりを高めるのではなく、「見えない学力」を高める取り組みにあるようだ。
本書『10年後の子どもに必要な「見えない学力」の育て方』(木村泰子著、青春出版社刊)では、先述の木村泰子氏が、大空小学校での取り組みと子どもたちから学んだことをベースにした子育て論を紹介する。
大空小学校での教育のキーワードとなる「見えない学力」とは何なのか。
昨年、コロナ感染拡大による緊急事態宣言で、3ヶ月間の休校期間があった。オンラインの環境がある家庭とそうでない家庭で格差がある、というのが当時よく聞かれた説だが、本書によるとこれは言い訳。子どもは親の姿を見て成長する。「あの子の家、オンラインができなくてかわいそう」ではなく、「違うやり方はないかな?」「あの子は大丈夫かな?」という親の姿を子どもは見て、お互いの違いを学び、楽しんで、お互いを思いやる。そうしていたら、子どもは誰のせいにもしなくなる。
「見えない学力」とはこういうこと。想定外を乗り越える。想定外を楽しんでしまう。違いを格差にせず、「いろんな子がいる」と想像する力が「見えない学力」であり、10年後の社会で生きて働く力なのだ。
「見えない学力」を身につけるには、「人を大切にする力」「自分の考えを持つ力」「自分を表現する力」「チャレンジする力」の4つが必要。これらは、子ども同士の関係性の中でしか育たない。学校は社会の縮図であり、だからこそ子ども同士が学び合い、課題を解決する力を育てることが、社会に出て通用する力を育てることにつながるのである。
本書を読むと、親が子どもにすべきことも見えてくる。家庭での親子のコミュニケーション、教育にも役立つはずだ。
(T・N/新刊JP編集部)
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