今は元気でも、いつ何時、大きな病気になるかわからない。
新型コロナウィルスが猛威をふるい、2人に1人ががんになるという時代に、多くの人が不安を抱えているだろう。
しかし大抵の人は、「病気になったら、いくらお金がかかるのか?」ということは、あまり考えないのではないだろうか。
「日本は健康保険制度があるから大丈夫」
「民間の保険にも入っている」
そう考えて安心している人も多いだろう。
医療アドバイザーの御喜千代さんは、1月に上梓した著作『大切な人が入院・手術になったときの病気の値段がわかる本』(アスコム刊)の中で、そんなあなたに警鐘を鳴らしている。
世界最大級の外資系ヘルスケアカンパニーで、外科や婦人科の分野で新しい手術の開発やトレーニングなどを行った経験を持ち、現在は健康管理師一般指導員、健康マスター・普及認定講師などさまざまな肩書きで活動する御喜さんは、新型コロナウィルスの影響で日本の財政は危機的状況だと指摘している。
2022年度以降を目標に、75歳以上の医療費の自己負担を1割から2割に引き上げることが決定し、現行の3割負担も4割、5割へと引き上げられるかもしれない。保険だけでは医療費をまかなえない可能性があるのだ。
いますぐ、病気のためのお金を備え始める必要があり、そのために知っておくべきなのが「病気の値段」だ。
御喜さんはこの本で、医療業界ではタブーとされてきた「病気の値段」を解説している。
たとえば、胃がん、大腸がんなどの治療にかかる費用総額は平均で100万円近く、心筋梗塞や脳卒中は平均で160万円〜180万円ほどかかる。自己負担が3割としても大きな負担だ。
また、入院中の食事代や差額ベッド代など、健康保険が適用されないものも多い。入院したときに必要となる1日あたりの自己負担費用は、なんと平均2万3000円にもなるという。
さらに、休業時の生活費や、通院時の交通費など見えない出費もかさむし、女性ならがん治療中のウィッグ代や、乳がんの治療中なら術後専用のブラジャー代なども必要となる。このような、治療以外にかかるお金が思いのほかに多く、想定外の出費となってしまうのだ。
知ると知らないとでは大違い。 この本では、これらについても具体的な金額を出して紹介しているので、ぜひあなたの預金通帳と照らし合わせ、あといくら備えなければならないのかを検討してみるべきだろう。
これはあなたの人生設計にも大きく関わる問題なのだ。
一方で本書では、負担をさげるための方法も合わせて紹介している。
たとえば、高額療養費制度を利用すれば、同月に払った自己負担分が一定の額を超えたときに、その一部を払い戻してもらうことができる。ただし、申請が必要であり、かつ、窓口では一旦、自己負担分を全額支払わなければならないため、やはり備えは必要だろう。
さらに、貸し付けや融資を受けられる生活福祉資金や年金担保融資など、一般的にはあまり知られていない制度まで、公的保障制度についてもさまざまに紹介している。
日本の公的医療制度は、世界に誇れるほど手厚い。
それを詳しく知ることで、病気とお金の負担を減らし、不安も軽減されるはずだ。
民間の医療保険については、①入院給付金日額 ②入院支払限度日数 ③通院給付金 の3つのポイントを確認することで、今のニーズに合ったものかチェックできるという。
また、薬の値段の仕組みを知ることで、薬代を下げることもできる。キーワードは、調剤技術料、薬学管理料、そしてジェネリック医薬品。
この本を読めば、薬代の明細をチェックすることの重要さがわかるだろう。
本書では、日本人がかかりやすいさまざまな病気の値段に加えて、治療法やアフターケアにかかる費用、いま誰もが気になる新型コロナウィルスの検査代・治療費にも言及し、細かいところでは快気祝いの金額まで、現時点における最新の「病気の値段」を解説している。
それを知ることで、自分の財産をどう活かすか、それを設計できるのは自分自身でしかないことがわかるだろう。何よりそれは、あなたと、あなたの大切な家族を守ることにつながるはず。誰もが健康の大切さに気づいた今こそ、病気とお金の問題を考え、未来のために備えをはじめるチャンスかもしれない。
(新刊JP編集部)
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