資産運用として、将来への備えとして、不動産投資は根強い人気がある。
ただ、「お金持ちのもの」「富裕層にしかできない」という思い込みもまた強く、それが「一般的な経済状況の、普通の会社員」が参入するにあたっての障壁になっている。
不動産投資は本当に「お金持ちのもの」なのか。『決定版! たった90分で人生が変わる ワンルームマンション投資入門 改訂版』(幻冬舎刊)の著者、住吉秀一さんへのインタビュー。後編では、不動産投資の中でもリスクが低いとされるワンルームマンションへの投資にコロナ禍で起きた変化について聞いた。
――新型コロナウイルスのお話がありましたが、都心部の区分マンションはあまり影響がなかったというのは意外です。
住吉:ほとんどないです。不動産関係で一番影響を受けたのはホテルや大型の商業施設でしょうね。
マンションのデベロッパーからすると、ワンルームマンションを建てようとする時に、これまで競合になっていたのはホテルだったんです。ワンルームマンションとホテルは立地が重なることが多いので。
――それはわかります。両方とも都心の駅近に建つことが多いですよね。
住吉:そうです。特に最近ホテル建設ラッシュでどんどん建てていたじゃないですか。もっというとホテルはマンションよりも建設用地を高く買えるんですよね。そうすると土地の所有者としてはホテルを建てるという方に売りたい、となります。だから、マンション側はホテルと競合すると分が悪かったんです。
それでこのコロナでしょう。新しいホテル建設が減って、マンション用の土地は値下がりするかと思いきや、そうでもない(笑)。
賃貸のワンルームマンションの話に戻ると、コロナの影響で3月と4月の引っ越しシーズンは人の動きが止まったんですね。ただ、よく言われていた「東京から脱出して地方に移住する」というケースはかなり少数派で、都心のワンルームマンションの稼働率が落ちたということはありません。
これは、冷静に考えると当然ですよね。テレワークが普及したといっても、人はどこかに住まないといけないわけで、わざわざ地方に行く人がどれくらいいるのかというと...。
――メディアでそういう人を取り上げているのを見たことがありますが、数としては少ないでしょうね。
住吉:そう思います。都心のワンルームマンションの賃貸物件はリーマンショックの時もほとんど影響がありませんでしたから、投資先としてはかなり手堅いと言えるはずです。
――当時影響があったのはどういう物件だったんですか?
住吉:家賃が100万円くらいする高級賃貸やオフィス向け物件は影響を受けました。それは今回も同じですね。「普通の人が普通に住む物件」には影響はありませんでした。
――不動産投資の「手堅さ」をメリットとする反面、「必ずしも誰もが利益をあげられるわけではない」ともされていました。成功する人と失敗する人を分けるものは何なのでしょうか。
住吉:失敗する人に共通するのは「儲けよう」という気持ちが強すぎて、高利回りとか低価格という売り文句に飛びついてしまう点です。
ワンルームマンションは手堅いのですが、そんなにすぐ儲かるわけではありません。それを理解したうえで地道にやっていける人はそんなに失敗しないのですが、トレンドや広告文句に流されやすい人は注意した方がいいと思います。
――高利回りを求めると、たとえば郊外や地方のアパートを一棟買って運営するという方向に行くわけですか?
住吉:そうですね。高利回りはリスクも当然高くなります。そこを容認できる方ならいいのですが、はじめて不動産投資をする方には、正直向いていないと思います。
――物件を購入した時点で、投資の成否はほぼ決まるとされていました。となると、必要なのは「情報」だと思いますが、購入するかどうかの判断材料になる情報の集め方についてアドバイスをいただければと思います。
住吉:インターネットからの情報や不動産会社からの情報など、様々なところから情報を得て、上手に活用していくのが第一なのですが、これはそんなに簡単なことではないですよね。
特にインターネットは、こと不動産投資に関してはきちんとした情報を得にくいと感じています。個人で不動産投資に成功しているYouTuberの方やフィナンシャルプランナーの方がネットで情報発信をしているのを見かけますが、「再現性」の点で問題があると感じることが多いです。
なので、これから不動産投資を始めるという方は、まずは信頼できる不動産会社を見つけて、そこから得る情報をもとにしてみるのが確実だと思います。
――また、借主の募集は不動産管理会社に任せている人が多いように思います。物件の所有者が借り手を集めるためにできることはありますか?
住吉:そこは個人では難しいでしょうね。今はインターネットで物件を探すのが主流ですが、不動産会社に依頼してポータルサイトに載せてもらうのが、一番効率がいいと思います。
――借り手が決まった後に起こりうるトラブルについての章も興味深かったです。家主の側からすると、借り手とのトラブルは定期的に遭遇するものなのでしょうか?トラブルと言うと直接借り手と家主がもめるというよりは、住民同士のトラブルに家主が巻き込まれるケースが多いと思いますが。
住吉:「隣の部屋の生活音がうるさい」と連絡がくるのはまれに聞きますが、それ以外はほとんどないと思います。コロナで家にいる人が増えていますが、とはいっても一日中家にいるわけでもないでしょうから、それで住民同士のトラブルが増えたということもありません。
都心のワンルームの場合は比較的「節度のある方」が住まれることが多い点もトラブルの少なさの理由としてあると思います。住民同士のトラブルは、物件の立地と住む方の属性、家賃の金額が関わってくるので。
――最後になりますが、これから不動産投資をはじめようと考えている方にメッセージをお願いいたします。
住吉:今回の本を通して、不動産投資は自分に縁がないものではなく、決して難しいものでもないということを知っていただきたいです。始めるにしてもやめておくにしても、実際のところを知っていただいて判断していただいた方がいいと思いますし、そのために今回の本は役立つのではないかと思っています。
もし興味を持っていただけたら、実際に不動産会社に足を運んで、担当者から直接情報を教えてもらうことをおすすめします。セミナーなどもありますが、今はコロナでリモートになっていたりします。やはり、対面の方が伝わってくるものがありますので、対面の方がいいのではないかと思います。
そして、不動産投資は始めるのであれば早い方がいいということもお伝えしたいです。
(新刊JP編集部)
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