2024年に新一万円札の顔となる渋沢栄一。今年のNHK大河ドラマ『青天を衝け』では、主人公にもなり、幕末から明治までのその生涯を描いている。
「日本資本主義の父」と称される渋沢栄一のことを「ビジネスの本質を理解していた人物」として、高く評価していたのが経営学者のピーター・ドラッカーである。
ビジネスに対する考え方や、変化の大きな時代に成果をあげたという点でも、この二人は共通点が多い。そして、共に物事の本質を見極めた人たちでもある。
変化の時代といえば、今がまさにそれだ。新型コロナウイルスの影響で世界的に経済や社会が混迷し、先行きを見通すのは不可能に近い。ただし、どんな時代であっても、未来創造のためのキーワードは「変化を機会としてとらえよ」だ。知恵次第では、これまでにはなかったチャンスを見つけることもできる。
『渋沢栄一とドラッカー 未来の創造の方法論』(國貞克則著、KADOKAWA刊)では、正解のない時代にビジネスと向き合った渋沢栄一とピーター・ドラッカーから、未来を切り開く方法と心構えを学べる一冊。知っての通り、渋沢栄一の生きた明治初期は激動の時代だった。
その時代に、渋沢栄一は西洋のカンパニーという仕組みを使って、当時の日本にはなかった新しい事業を次々に生み出し、社会的イノベーションを起こした。一方、ドラッカーは「マネジメント」という言葉さえほとんど使われていなかった時代に、人類史上初めてマネジメントという分野を体系化した。
二人はともに、高く広い視点で時代が要請するものを見極めていた。
当時の日本は、西洋による植民地化を避けるために、富国強兵を旗印とし、産業の育成が急務だった。渋沢は、明治という時代が求めるありとあらゆる事業を設立していく。
まず、事業に融資をするという日本で初めての銀行を設立。次に製紙会社を設立した。明治になって税は紙幣で納めることになり、全国の義務教育の学校が設立され、教科書が必要となったからだ。明治初期という時代は、大量の紙が必要になった時代だったのだ。
ドラッカーも常に社会全体という視点でものを考えていた。19世紀までの人類の大半は、職人や農民など、個人で働いていた。それが20世紀になると、人類の大半が組織で働くようになる。そういう社会になれば、組織のマネジメントがうまく機能しなければ人類は幸せになれない。そういう時代の要請がドラッカーをマネジメントの研究に向かわせたのだ。
二人とも、高く広い視点で時代が求めているものを見極め、行動した。他にも、「本質を見極めていた」「誰もやっていない新しい道を歩むことを決意した」という点も二人の共通点であり、新しい未来を創造できた要因となっている。
どんな時代でも、物事の本質は変わらない。本質がわかっていれば、大きな変化の時代であっても、何を考え、どう行動すればいいのかわかる。新しい時代を創り上げてきた渋沢栄一とドラッカーは、未来を創っていく世代の今のビジネスマンにとっても、学ぶことが多いはずだ。
(T・N/新刊JP編集部)
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