「子どもの想像力を伸ばしたい」
「自然や日本の文化に興味を持ってほしい」
そう願うご両親も多いでしょう。
かといって、無理強いしては、親も子どもも負担が増すばかり。
大切なのは、子どもの「好き」を見つけること。
好きだから夢中になって、自由に想像を広げていく。わくわくしながら、身の回りの自然や日本の文化に目を向ける。これが理想の形ではないでしょうか。
『妖怪のたおしかた』(小松和彦監修、アスコム刊)はそんな課題に答える一冊。
多くの子どもが一度はハマる妖怪。幼い頃に、「もし妖怪が現れたらどうしよう?」と想像した人も少なくないでしょう。
この本の特徴は、妖怪の「たおしかた」に注目したことです。
実は、多くの妖怪は弱点を持っています。体の一部を突かれると弱かったり、逃げ出すほど苦手なものがあったり、ある呪文を唱えると現れなくなったりと、まさに十人(十妖怪?)十色。
危険な妖怪もいれば、ちょっとイタズラ好きだったり、人間の役に立ったりする妖怪もいる。そんな妖怪の弱点を知れば、山のように大きな妖怪をたおしたり、逆に気のいい妖怪とは友だちになったりできるかもしれません。それらをまとめて、この本では「たおしかた」として紹介しています。
では、妖怪たちはどんな弱点を持っているのでしょうか。
河童の腕は、引っぱると抜ける
河童の左右の腕は体の中でつながっていて、一方を引っ張ると抜けてしまいます。
天狗はサバがきらい
神通力を駆使して空を飛ぶ山の主・天狗。実はサバがきらいで、「サバを食べた」と言うと逃げ出すそう。
ぬりかべは下をはらうと消える
突然ゆく手をはばむ見えない怪異ぬりかべ。下のほうをサッとはらうだけで、あっさりいなくなります。
かいなではウンコの前の呪文で封じ込められる
トイレの中からお尻をなでる、悪趣味No.1の妖怪かいなでは、「赤い紙やろか 白い紙やろか」と唱えれば現れません。
この本で紹介される妖怪はどれも怖すぎず、どこかおかしみのあるタッチで描かれています。
本の制作にあたり、発行元のアスコム編集部は
「妖怪は、怖いだけでなく、愛らしくて、ちょっとまぬけで憎めない存在。そんな、どこか人間っぽい妖怪の面白さを伝えることを大切にしました」
としています。
弱点を突かれて、困ったり、くやしがったり、スタコラ逃げ出したりしている妖怪は、屈指の人気を誇る妖怪絵師のなんばきびさんの手によるもの。ことさら怖さをあおるのではなく、妖怪を親しみのある存在として描いています。サバがきらいな子は、「自分と同じだ!」と天狗に共感できて、好きになっちゃうかもしれませんね。
そもそも妖怪は、人間の想像力が生み出したもの。
この本の監修を務める民俗学者の小松和彦先生は、本の冒頭でこう書いています。
「人間の力では解決できない災い、人知を越えた不思議な出来事が起きたときに、大むかしの人たちは、『妖怪のしわざ』と考えました」
妖怪はまさに、自然への敬意と恐れが生み出した日本人の文化です。そういう視点で妖怪を見ることで、妖怪がいる身の回りの自然や文化への興味が生まれてきます。
日常の中で妖怪と出会う。そんなシチュエーションを描いたがマンガを面白く読みながら、「この妖怪が現れたらどうしよう」と繰り返し考え、いつの間にか想像力が豊かになっていくのだといいます。
また、本書では47都道府県すべての妖怪を紹介しています。
河童、天狗、ぬりかべ、ひとつ目小僧、ろくろ首、ダイダラボッチ、のっぺらぼう、砂かけばばあ、牛鬼などのメジャーな妖怪から、北海道のイペカリオヤシ、千葉県のモウレンヤッサなどローカル色の強い妖怪まで勢ぞろい。
「本を開いて、まず見るのは自分の住む場所に現れる妖怪。『もし自分の前に現れたらどうしよう?』『こうやってたおせばいいのか』とわくわくできるはずです」
と編集部。
事前のアンケートでも、「子どもがうれしそうに妖怪のたおしかたを教えてくれる」「自分で妖怪の弱点を考えるようになった」という声が多く寄せられたのだとか。
その妖怪に関する伝承やエピソードも豊富なため、大人も楽しめる点もポイントです。
兵庫県の姫路城の天守閣に住む小刑部(おさかべ)姫や、富士山と琵琶湖を作ったという言い伝えが残るダイダラボッチなど、思わず「へぇ〜」と言いたくなる豆知識が満載!
なお妖怪は、家の門や、山、海、川、空などの「境界」と呼ばれる場所に現れるといいます。海や川、湖なら河童や舟幽霊などの水に棲む妖怪を、山に出かければ天狗やダイダラボッチを子どもと一緒に探してみてください。
お寺や神社、お城などに現れる妖怪もたくさん紹介されていますので、歴史に触れるきっかけにもなりそうです。お散歩が楽しいこれからの季節は、子どもと一緒に妖怪探しに出かけるのも楽しそうですね。
巻末には、読み札、取り札、それぞれ16枚の妖怪かるた付き。
すべての札の裏に、その妖怪のたおしかたが書いてあるので、読み手と取り手で答え合わせをしたり、大人と子どもで読み手を入れ替えたりしても楽しいですね。
日ごとに暖かくなり、全国で妖怪たちが動き出しています。
「へぇ〜!」「そうだったの!?」と言いながら想像して楽しみ、身の回りの自然や日本人の文化にも目が向けられる、親子で一緒に読める一冊です。
(新刊JP編集部)
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