経営者であれば誰もが、自分の会社の価値を高めたいと思っている。
魅力的な商品・サービスを世に出して売上を上げ、利益を伸ばし、顧客を増やしていくことで会社の価値は高まっていく。その視線の先には株式上場があるのかもしれないし、M&Aによる事業売却があるのかもしれない。
一方で、ほとんどの企業は「中小企業」だ。たとえば年商10億以上の会社は全体の5%ほど。自社の年商が10億円に到達したら、日本の企業の中では「かなりのもの」である。それこそ上場やM&Aなど、次のフェーズが見えてくるため、ここを目標にしている経営者も多いのではないか。
ただ、「業種・業界・ビジネス分野関係なく、年商10億にいくためには3つの壁がある」とするのが、『ゼロから年商10億円企業を創る』(ぱる出版刊)の著者で、自身でも多数の事業を立ち上げ、成長させてきた松本剛徹氏だ。
松本氏が言う「3つの壁」とは
・年商1億円の壁
・年商5億円の壁
・年商10億円の壁
である。それぞれのフェーズごとに、経営者のやるべき仕事も、必要なマインドも、適切なマネジメントも異なる。経営者は事業の規模ごとに自分を変えていかなければならないのだ。
では、「壁」の内容とはどのようなものなのか。たとえば、年商0~1億円の企業で起こりがちな課題には、
・商品やサービスがなかなか売れない。
・売上が上がっても利益が全然残らない。
・創業資金が底を突きそうでヤバイ。
・社長だけが忙しく労働集約的になっている。
・人を雇うことに抵抗がある。
・眠れないほど不安に駆られることがある。
・1億円の壁がなかなか越えられない。
などがある、スタートアップ期の企業は特にこの傾向が強い。
この時期の経営者の仕事は苛烈を極める。商品企画から営業、財務、資金調達まで、何でも一人でこなすことになることが多いのがこのステージの特徴だ。
ただ、この状態では、今以上の売上拡大は望めない。ビジネスモデルを変えたり、人を雇ったり、自分の負担を軽くすることで、成長のための戦略づくりに割く時間を捻出することが必要になる。
また、年商1~5億円の企業では、
・良い人材がなかなか採用できない。
・チーム連携がうまくいかない。
・評価制度や賃金制度がない。
・社長が頑張っても売上が伸びない。
・第二、第三の商品がヒットしない。
・マーケティング施策が単一的になっている。
・新規事業を立ち上げたいがネタがない。
といった問題が起きやすい。「人」に関する悩みが増えること、そしてそれまでの成長を支えてきた商品・サービスに続くものの開発に苦慮するのがこのステージの特徴である。
年商が5億円を超えると、経営は安定してくるが、そこから10億円までにはまだハードルがある。このステージでは、
・売上が毎年横ばいになっている。
・右腕や左腕と呼べる人材がいない。
・古参社員と新参社員が揉めている。
・チームが一つにまとまらない。
・会議で発言をするのは社長ばかり。
・社長が節税対策ばかりを気にしている。
・仕事が人に依存してしまって仕組み化できていない。
といった課題が生まれるという。良くも悪くも売り上げが安定して、突き抜けられなかったりするほか、社内の派閥争いやもめごとが生まれやすいのがこのステージ。組織や業務プロセスの強化・改善が求められるフェーズである。
◇
ここで紹介したように、会社で起こる問題や課題には、会社の規模ごとに大まかな傾向がある。本書では、それぞれの課題に対して、著者自身の失敗談・成功談を交えて対処法を解説。年商10億円という「ゴール」に向かって最短距離で走る方法を明かしていく。
事業を成長させ、経営者として成功するためのハードルは数多くあるが、どんな課題にも先人たちの知恵がある。本書は今後の経営への確かな指針となってくれるはずだ。
(新刊JP編集部)
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