会社員の給料が上がりにくくなったと言われて久しく、また、昨年から続くコロナ禍の影響で賞与が抑えられている業界・業種も少なくない。そして年功序列の賃金体系から成果主義へ、というのが大きな流れとしてあり、どうにも自分の人生の先行きに明るい想像をしにくい世の中になったと言えるかもしれない。
思えば、コロナ以前から日本の企業には、勤続年数に応じて給料を上げ続けるシステムを維持する余裕はなくなっていた。正確に言えば、賃金に見合った働きができない社員を抱える余裕がなくなっていた。
2020年、早期・希望退職者の募集を実施した上場企業は上半期だけで41社と、前年一年間の35社を上回ったのは、そのことが顕在化した事象だろう。背景にはまちがいなくコロナがあったわけだが、コロナは「原因」ではなく「きっかけ」だったと考えるべきだ。
『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(西尾太著、星雲社刊)は、今後日本の企業で起こりうるさらなる変化を挙げている。変化の兆候自体はかねてからあったが、コロナによってさらに顕著になるであろう変化だ。
その一つが「年功(後払い)給与→時価払い給与」。年功序列の給与体系は「若い頃の給料は安いけど、50代あたりからたくさんあげます」という「後払い」の性質があったが、これは企業が給料の高いシニア社員を大量に抱え込む原因となっているため、今後は「年齢を問わず今のパフォーマンスが今の給料に反映する」スタイルに変わっていくのは間違いない。
また、かなり前から指摘されていた、成果主義への流れも加速していくはずだ。コロナ禍で増えたテレワークはその流れを推進する格好のきっかけになる。テレワークではオフィスで「やっている感」を出して評価者の印象を良くすることはできない。
そして成果主義は「給与ダウンが当たり前」になる時代を予感させる。
これまで、日本では「給料は下げない」という考えが一般的だった。ボーナスに差があったり昇給がなくても、基本給は維持されていた。その代わりに早期・希望退職者を募って中高年をリストラしていたわけだが、それでは企業が持たない時期に来ていると本書は指摘している。
企業からすれば、上げるべき人の給料を上げて、下げるべき人の給料は下げたい。成果主義は、こうした企業側の思惑と相性がいい。仕事ぶりに比べて給料が高すぎる社員は、成果主義によって間違いなく減るし、こうした人員が温存される原因の一端となっていた「部長代理」「○○担当部長」などの隙間役職も廃される方向にいくはずだ。
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「給与ダウン」や「年功序列の廃止」「成果主義」というワードだけを見ると、なんとなく心がざわつき、不安になってくるが、その本質は「現在の能力がそのまま給料に反映される」ということであり、真剣に仕事に取り組んでいる人がむやみに不安がる必要はない。
むしろ、考えるべきは成果主義や欧米型のジョブ型雇用の中で高く評価されていくために何をするかだろう。本書のメインテーマはそこにある。
「コロナ後に評価される人」になるために、手に取ってみてはいかがだろう。
(山田洋介/新刊JP編集部)
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