テレワークが広まりはじめてから一年。
オフィスに出勤していた時よりも良かったことや、不便なところが把握されはじめている。
はっきりしているのは、両者はどちらが優れた働き方だと判断できるものではなく、別物だということ。だから仕事の進め方もマネジメントも、出社している時とテレワークの時は、それぞれに適したやり方があると考えた方がいいのかもしれない。
では、マネジメントはどうだろう。
『テレワークで部下を育てる』(片桐あい著、青春出版社刊)では、テレワークで部下が育つマネジメント法を解説すると同時に、テレワークでは「NG」なマネジメントについても明かしている。
テレワークでは、当然ながら部下の顔は見えないし、オフィスにいた頃ほど密に連絡がとれない。それによって「指示をより正確に」という意識がはたらくのか、はたまた部下を管理できているのか不安が生じるのか、一つ一つの作業にたいしてタスクレベルでやたらと細かく指示出ししたり、頼まれてもいないのに過干渉気味にアドバイスをしてしまう上司がいるそう。
きめ細かく指示を出すのはいいのだが、度が過ぎると仕事の自由度が皆無になり、部下が自分で考えて仕事をする余地がなくなってしまう。上司は良かれと思ってやったことで、「指示待ち人間」を大量に作ってしまう結果になるのは何とも皮肉だ。
あまりにも細かく指示を出しすぎる上司もいれば、あまりにも細かく報・連・相を求める上司、なかには1時間に1回部下に電話をかけて進捗を確認する上司もいるという。
できるだけ業務状況を正確に把握したいと思うのは上司の性だが、これもやはり、いきすぎると部下に対する時間的な負担が大きくなるばかりでなく、「自分はそんなに信頼されていないのか」という不信感を与えてしまいやすい。これはその後の部下の仕事のモチベーションや上司との関係にもかかわってくることだろう。
部下を信頼しきれなかったり、テレワークでの自分のマネジメントに自信がない上司ほど、「タクシー無線」のように細かすぎる連絡を求めてしまいやすい。
テレワークで失われたものとして、「雑談」がある。
仕事に直接関係はないが、雑談を通じて一緒に働いている人の人となりを知ることは、巡り巡って仕事の進めやすさにつながっていた。
その雑談の場が失われた今、仕事のやりがいや達成感、あるいは部下の気持ちを汲むことには関心がなく、もっぱら業務効率と結果だけを考えて仕事をするタイプの上司は、部下から「ロボット」のように冷たい印象を持たれやすい。
対面で仕事ができていた時は、このタイプの上司でも会話を通じて部下のグチや悩みを把握することができていたが、テレワークだとそうはいかなくなってしまう。部下の精神状態や仕事での充実感がまったく把握できなくなってしまうのが、このタイプの上司がテレワークで陥りやすい問題なのだ。
◇
オフィスでの仕事とテレワークでの仕事は別物。
オフィス時代と同じようにマネジメントするだけでは、テレワークではなかなかいい結果が出ないものかもしれない。
では、テレワークに特化したマネジメント、テレワークで部下が伸びるマネジメント、テレワークで組織のシナジーを最大化するマネジメントとはどのようなものなのか?本書からはそのツボを学び取れるだろう。
(山田洋介/新刊JP編集部)
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