ネット上での誹謗中傷が問題になることの多い昨今だが、職場や家庭、学校などリアルの世界でも攻撃的な言葉、巧妙な屁理屈を言ってくる人はいるもの。それらの中にはパワハラ、モラハラ、マウンティング、中傷と捉えられるものもあるだろう。
すべてに向き合っていては身が持たない。悪意ある言葉から自分自身を守るにはどうしたらいいのか。
『屁理屈に負けない! 悪意ある言葉から身を守る方法』(桑畑幸博著、扶桑社刊)では、ロジカル・シンキングのプロとして慶應社会人ビジネススクールで20年のキャリアを持つ慶應MCCシニアコンサルタントの桑畑幸博氏が、屁理屈にも傷つかず、騙されたり、流されたりしないためのコミュニケーション方法を紹介する。
たとえばこんなシチュエーションの場合、どのような対処をすればいいのか。
「定時に帰ります」と言ったら、「ふざけるな残業しろ!」「俺が働いているのにもう帰るの?」と圧をかけてくる上司は未だに一定数いる。
この上司の発言は、職場にある古い常識や狭い常識、上司個人の価値観に基づいたものと言えるだろう。この場合、世間一般の常識や法律などのルール、自分自身の価値観といった自分の主張する前提条件となっている部分を自覚してもらい、その前提条件が本当に正しいと言えるかどうか、考え直してもらう以外にない。
なので、やるべきことは「問いかけ」だ。
「定時に帰ります」「ふざけるな残業しろ!」の後に、「なんで残業しなければならないのですか?」と問う。ここで「プライベートより仕事が大事に決まっているだろ!」と、上司の主張の前提となる条件を引き出したら、「それが今の社会では理不尽とされていてもですか?」と問いかける。
上司に対してこのような言い方は実際には難しいと思えるかもしれないが、古い常識や狭い常識に基づいた理屈に従ってばかりいたら、この状況から抜け出せなくなり、職場に蔓延した価値観は保存される。さらには、長いものに巻かれることを続けていると、それが自分の常識になり、自分も上司と同じ理屈を後輩に言い出すようになってしまう。
「仕事はプライベートに優先する」という前提条件が正しい場所・タイミングは今やごくごく限られている。そこに気づいてもらうことが重要となる。また、個人の価値観による屁理屈の場合も、「それはわかります」と相手の価値観を認めた上で「でも私は」と自分の価値観も大事にしたいことを伝えることが大切だ。
相手の屁理屈の前提条件は何なのか。そこを明らかにし、それが絶対に正しいとは言えないことを相手に理解してもらうことが、屁理屈から自分を守る方法の一つとなる。
いつ自分に向けられるかわからないのが、悪意ある言葉や屁理屈。突然、その時が来た場合にうろたえたり、傷つくことがないように、対処法は習得しておくべきだろう。また、自分自身が不理屈を言う人にならないためにも、本書を活用してみてはどうだろう。
(T・N/新刊JP編集部)
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