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「腐ったみかん」と呼ばれた女子高生が医学部合格 夢を叶えた医師が語る「変われた理由」(2)

  • 書名 『腐ったみかんが医者になった日』
  • 監修・編集・著者名河原風子
  • 出版社名幻冬舎

母親との折り合いが悪く、中学生になったころから家に寄りつかず、非行を繰り返すようになった。高校に入るとそれはさらにエスカレートし、警察沙汰になるような事件を起こした。教師からは「腐ったみかん」と呼ばれた。

しかし、社会人になってから一念発起し、子育てをしながら大学受験。見事医学部に合格し、今は小児科医として人の命を救っている。

ドラマのような話だが、実話である。『腐ったみかんが医者になった日』(幻冬舎刊)は医師・河原風子さんによる半生記だ。普通なら隠したいと思うトラブルや確執をあえてさらけだすことで、彼女が伝えたかったことは何だったのか?注目のインタビュー、後編をお届けする。

■子育てをしながらの医学部合格を可能にしたものとは?

――社会人になってから大学に入り直して医師になるというのは強烈な意思と努力がないとできないことだと思います。何がモチベーションになっていたのでしょうか?

風子:医師になるというのとは別に、人を助けたいという気持ちは昔から人一倍強いんです。事故や災害のニュースを見ると「今すぐ駆けつけて何かできることをしたい」という衝動に駆られていました。

でも、その気持ちだけでは現場に行っても役に立ちませんし、体力もありません。役に立てるとしたら頭を使ってできることだろうなというのはありました。あとは子どもが好きだったんですよね。困っている人を救うことができて、子どもが好きというところで、小児科医という仕事がぴったりでした。だから、どうしてもなりたかったんです。

――人を救いたいという気持ちが性格の根本にあったんですね。

風子:そうだと思います。あとは自己暗示です(笑)。親との確執があって一度道を外れかけた私なら、より患者さんの感情に寄り添ったり、親御さんの気持ちを察することができるはずだ。だから私は医師になるべき人間なんだ、困っている人たちのためにも絶対にならないといけない、と自分で自分に信じ込ませてモチベーションを高めていました。

念願かなって医師になれたのは、周りの人のおかげです。娘が熱を出した時に私が予備校を休もうとすると自分が休んで面倒を見てくれた当時の義父や、忙しい時に子どもたちを預かってくれたママ友たち、応援してくれた小中の同級生にはすごく支えられましたし、期待を裏切りたくなかった。だからがんばれたんだと思います。

――子育てをしながら医学部に合格するのは誰もができることではないと思いました。時間的な制約や体力的ものも含めてきつかったことは多いのではないかと思いますが、目的を達成できた要因はどんな点にあったのでしょうか?

風子:きついといえばきつかったですけど、「夢を追えている」ということ自体が幸せだったんですよね。

ただ、時間はびっくりするくらいなかったです(笑)。午前中はアルバイトをして、午後は勉強、17時からはごはんを作って娘たちと遊ぶ時間で、娘たちが寝た後の22時からまた2時間くらい勉強、というサイクルでした。コンビニで並んでいる時とか、エレベーターの中とか、「スキマ時間」を活用して勉強したり、今考えるとけっこうがんばっていましたね。

もし24時間自由に使える状態だったらかえって勉強できなかった気がします。家事や子育てで勉強に使えない時間があるのは仕方ないので、その時間は思い切り子どもたちと遊ぼうと割り切って、使える時間をいかに濃いものにするかという工夫をしたのがよかったのかもしれません。

――「公文式で中学校の数学から始めた」と書かれていました。そこから医学部合格まで何年くらいかかりましたか?

風子:5年くらいです。医学部の受験自体は2回目で合格したのですが、大学受験のレベルに達するのに時間がかかりました。中学、高校とほとんど勉強してこなかったので。

――2度目のチャレンジで医学部合格というのがすごいですね。そこからはつまずくことなく行けたのでしょうか?

風子:受験の時は中学高校で遅れた分を追いつかないといけなかったので大変でしたが、医学部に入ってしまえば他の人と同じように1年分の勉強を1年で終わらせるだけですから、忙しくはありましたがそこまで大変とは思いませんでした。その後の医師国家試験でもあまり苦労はなかったです。

――大学入学した時は、現役合格した人よりも10歳ほど年長で、周りは年下の学生ばかりだったかと思いますが、その状況で苦労したことはありますか?

風子:最初は年齢が周りの人と全然違いますから、浮いたらどうしようと思っていたんですけど、いざ入ってみると本当にいい友達ばかりでした。みんなと遊びに行く時も子どもを連れてきていいよと言ってくれましたし、行くと面倒を見てくれました。今でも気にかけて連絡をくれますし、友達には本当に恵まれましたね。

――医師になるという夢を叶えた今、次の夢がありましたら教えていただきたいです。

風子:難民支援や災害医療を通して子どもたちのために生きたいと考えて、そのために必要な勉強をしているところです。また日常の診療では治療を通して、少しでも多くの笑顔がみられるよう、日々奮闘しています。子どもたちの夢のために私にできることがあれば何でもしたいです。

――最後に読者の方々にメッセージをお願いいたします。

風子:若い世代の皆さん、今人生を楽しめていますか。夢を追えていますか。
恵まれない環境だから、と人生をあきらめたり、自分は世の中に必要がない人間だなんて思ったりしていませんか。

私は今医師をしていますが、若いころは毎日ケンカに明け暮れたり、野宿したりしていました。帰る場所がなくて、さみしくてつらくて、自殺しようとしたこともあります。それでも何とかとどまって、今は念願の仕事があり、幸せな生活を送っています。どうやったら困難を乗り越えられるか、幸せになることができるのか、そのヒントをこの本につめこみました。

人はみんな、世の中に必要とされるような役割があり、夢を追う権利があります。みなさんが少しでも前向きに生きられる手助けをしたいと心から思ってます。あなたたちの人生を応援しています。

今どんなに辛くても何としてでも生き抜いてください。そしてあなたを信じてくれる友達を決して裏切らないでください。家庭に居場所がなく、社会からからも見放された私が今の自分になれたのは、支えてくれた友達のおかげです。

生き抜くだけでは大人になった時に助けてはもらえないかもしれません。私にはずっと支えてくれた友達がいて、その人たちだけは裏切りませんでした。これも大切なことだと思うんです。

(新刊JP編集部)

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